光射す方へ
※この物語はフィクションです。
絶対に真似しないでね!
未だぼやーっとしているエインをみんなが困った表情で見つめる。それにいくら力持ちのマカロでも彼をずっと負ぶって歩くのは大変だ。そこでシャルロットが一つの提案をする。
「私、ダウダウを倒しているうちにレベルアップしましたの。「ミニマル」という魔法を習得しましたわ。それを使いましょう」
彼女が説明するに、「ミニマル」という魔法は味方一人の身体を野球ボールぐらいの大きさの球体=魔昌球体の中に閉じ込めて完全防御するというものであった。それに賛成したみんなはエインを「ミニマル」の魔法で球体の中に閉じ込めてそれをアイリーンに渡す。
「なんで私に……」
アイリーンの掌の上でコロコロ転がるエインの入った小さな魔昌球体。彼女がコツンと指で弾いてもびくともしない。ただ少しエインの身体が揺れた。まるでカプセルに入ったフィギュアのようである。
「……ちょっと可愛いなって思ってるでしょ?」
シャロンがそう言うと頬を染めて必死に否定するアイリーン。みんながクスクスと茶化すように笑った。少しだけだが場が和む。
「ねぇねぇーこっちも何とかできないの? シャーロ君のお姉さん」
コーリンが割れた天使の輪っかをシャルロットに見せた。彼女は特殊スキル「術式修繕」を使って割れた天使の輪っかをピッタリと魔法の力で一つにくっ付けることに成功する。次の瞬間ピカッとある方へと向かって一直線に黄金の光が射した。
「今のは何でしょうシルヴァ様」
「わかりません。しかし何らかの導きかもしれません。行ってみましょう」
ピアズの問いかけにそう答えたシルヴァ。とにかく地獄での情報は少ない。そんな中で見えた一筋の光明とはこのことではないか。そう考えたみんなは光が射した方へと移動することにした。安全圏を離れて……
――その頃魔王ディオウスと「オカー」は急に差し込んできた金色の光に反応する。
「オカー! 大丈夫か?」
「……うっさい死ね」
無表情のままそう言い放つ「オカー」。彼女が言葉を口にしたのを始めて聞いたのと投げかけられた言葉のショックさとで複雑な表情でへたり込む魔王ディオウスであった。
「どうやらエイン達はオカーの輪を入手したようであるな……あの光の方へ歩んでいくとお前の心も元に戻るぞ。そうしたら我の嫁になってくれ」
「シュンシュン……許さない」
会話が噛みあわない事にも気にせずベラベラと話し続ける魔王ディオウス。「オカー」の口から出るのはシュンシュンへの憎悪の言葉と彼に対する口汚い言葉ばかりである。魔王ディオウスは「シュンシュン」という言葉が気になったがそれより隣にいる「オカー」を見て浮かれていた。もうじき自分の見初めた女が手に入る。そういった悦に入って。
「裏切り者……許さない……」
(どことなくアイリーンに似ているな……)
魔王ディオウスはそう思いながら光が射した方へと向かってミッションを達成させるために「オカー」の手を握りながら歩き出そうとしたが強く爪を立てられたので横に並んで歩くことにした。
天使の輪っかと「オカー」が近づくに連れてアイリーンの握っている聖剣シルヴァラールが徐々に輝きを増していくのであるが、道中のヘルグループの仕置き人に手こずっていた彼らは気づかなかったのである。後にアイリーンは辛い選択を迫られることになるが魔物から逃げるのに必死な彼女には想像できなかった。




