ディオウスと「オカー」
※この物語はフィクションです。
絶対に真似しないでね!
一人残された魔王ディオウスはみんなを探している最中、赤い髪が特徴の美しい女が、一体の魔物に地面に身体をうつ伏せにされているのを発見する。そしてその魔物は女の上で足組みをして高笑いをしながら、
「次はどんな死に方がいい? まぁ今のお前には何の感情も無いだろうがな!」
と言った。そこでピンときた魔王ディオウスは彼女こそが感情を失いし赤髪の天使であると思い、その魔物の元へとゆっくり歩み寄っていく。
「む。貴様は新入りの仕置き人か? 俺はバウバウ。立派な角を持っているな!」
「お褒めの言葉ありがとうございます。そうです。新入りの仕置き人です。よろしければここでのルールを教えていただけませんか?」
魔王ディオウスはサラッと嘘をつき地獄の情報を得ようとした。こうした地道な嘘の積み重ねでかつて「魔王」という地位にまで上り詰めたというのが彼の自慢の一つである。そして一連の話を聞くと魔王ディオウスは得意な呪いを魔物に唱える。
(我の仲間になれ。バウバウよ……)
「はい、分かりました。ディオウス様」
聴こえた声は二人分であった。うつ伏せで倒れていた女も同時に返事をしたのである。しかもその女に魔王ディオウスは恋をしてしまった。そこで彼は、
「初めての任務だ、バウバウ。この女の仕置き人は我が担当になったとヘルグループの社長に伝えろ」
という命令を出したのである。バウバウが頷いてその場から去っていったあと、目に光が無く身体の力が抜けて人形の様になっている赤髪の女を見つめながら恍惚とした顔で微笑みかける魔王ディオウス。
「お、お名前は?」
「……」
問いかけても返事が無い。そこで気付いた。まだ彼女の呪いが解けていないのだと。しかしなぜ女にも呪いが通じたのかは不明である。
(大事な名を教えろ。いや、教えてください。あとスマイル一つ……)
魔王ディオウスは再び女に呪いをかけた。笑顔は無かったがたった一言……
「おかー……さん……」
そう女は呟く。それを聞いた魔王ディオウスは女のことを「オカー」と呼ぶ事にした。普通ならば「お母さん」だと想像すると思うが、その大きな角で親の腹を割いて産まれてきた彼は母親というモノの存在を知らない。
「オカー。一緒にここから逃げ出そう……いやまて、地獄の王として我は生きる! そのために共に地獄に革命をもたらそうぞ!!」
いつになく燃えている魔王ディオウス。本来「魔物界の王」であった彼にとって地獄はとても居心地のいい場所である。そこで彼は考えたのだ。天国より地獄で華を咲かせようと。しかし事はそう上手くいかず……
「オマエか。バウバウから仕事を奪った悪い奴ぁ?」
豪くガタイのいいムキムキのサングラスをかけたブルドッグの様な顔の魔物が、ドシドシと音を立てて魔王ディオウスの方へ歩いてくる。
(我の夢……儚く散ったり)
彼がそう思った瞬間、
「ほぅ。オマエには天使再生の能力があるのか。そりゃ有難い。この女にはちょいとした手違いがあってな。バウバウは牢屋に閉じ込めておいた。そうか、オマエ達がダンダバの知り合いか……御免。挨拶が遅れた、ワタシはワンワン。ヘルグループの社長だ」
そう名乗ってきた。魔王ディオウスの特殊スキル「ゴマをする」も「洗脳」も全く効かない。そんな相手に怯えていた魔王ディオウスであったがワンワンからあるミッションを託されて事なきを得たのである。それは魔王ディオスと「オカー」と共同で行うある大事なミッションであった。




