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四角関係劇場の始まり

※この物語はフィクションです。

 絶対に真似しないでね!

 ――早朝3時30分。


 真っ先に目を覚まして身支度をし、誰よりも先に食堂へ向かったのはぺディシオンだ。魔王ディオウスやランランとの密会のためである。彼らはぺディシオンがアヴァロの歌によって魔王ディオウスの洗脳から解放された事を知らない。エインの考えた作戦は、「()()()()()()」というものだ。内容は、またエインとアイリーンが喧嘩してしまったというものである。内容は、エインがシルヴァに恋をしてしまったという全くの出鱈目話である。そしてそれを知ったピアズもエインの事を敵対視しているというオマケつき。勿論全てエインたちが考えた茶番だ。知らないのはシャロンとコーリン、マカロ、作業員のおばちゃんたち、そして魔王ディオウスを含むゲキヤスフーズの者たちだけである。


「私ではなくあのプライドの高い女の方へなびくなんて……」


「そんな事はどうでもよい。我々の作戦はうまくいっているようだな。にっくきシルヴァとピアズも巻き込めた。このまま監視を続けよ、ぺディシオン」


「わかりました、ディオウス様」


 魔王ディオウスは完璧な演技をこなすぺディシオンに完全に騙されているようだ。早朝4時を過ぎてちょっとするとエインたちがやってくる。エインとピアズは魔王ディオウスたちの前で口論をする演技をしていた。そう、最初は演技のはずだったのであるが……


「シルヴァ様が()()()()の相手などするわけがないだろう、身の程を知れ」


「何だとぉ! 知ってるんだぞ、君が実は()()()()()()をかいて寝てること!」


「くっ、貴様なぜそれをシルヴァ様の前で言う、この()()()()!」


「ちょっ、なんでみんなの前で言っちゃうんだい!? もう君とは()()だ!」


(はなからその設定だったでしょう……!)


 アイリーンが白目を剥いて、喧嘩をしている二人に対して心の中で突っ込む。シルヴァたちも呆れた様子でエインたちを見ていた。まるでこどもの様な口論に興味を持ったのはおばちゃんたちである。


「あんた、アイリーンちゃん捨てたのかい? な男だねぇ。まるで天流てんりゅうドラマのタラシな男主人公みたいだよ。あぁかわいそうにアイリーンちゃん、シルヴァちゃんに彼氏盗られちゃったのねぇ~こっちおいで。飴ちゃんあげるよー」


 一人のおばちゃんがそう言った時、微かに空間が歪んだ様な不思議な感覚をアイリーンは覚えた。これはもしかしなくても、「嫉妬」である。


(これは作戦だよ。気に病むことないさ)


 エリッサが硬直するアイリーンにそっと耳打ちをする。すると彼女はにっこり笑って、


「うん。わかってる、()()も地図を読むだけの()()()()()()もあるから、大丈夫よ」


 と言った。一瞬で空気がガラッと変わる。その異様な雰囲気を感じ取ったエインとピアズは幼稚な口論を止めてアイリーンとシルヴァの方を向いた。見えない炎がメラメラと燃えている。あんぐりと口を開けるエインたちの方へアイリーンとシルヴァが不気味な笑顔でにじり寄る。


「どっちが好きなの?」


「どちらを選びます?」


 アイリーンとシルヴァがエインとピアズに質問した。声はどちらとも柔らかだが表情を見ると決して笑っていない。二人はその凄まじい気迫に生唾を飲み込む。


「勿論シルヴァ様です!」


「もちろんアイリーン、君だよ!」


 ピアズが先に解答した事に不快感を抱いたアイリーンが腕組みをし、先に名を呼ばれたシルヴァが得意げに口に手を当てふふっと笑った。その態度にヒステリーを起こしたアイリーンはシルヴァの事を


ましてんじゃないわよ、この()()()!」


 と呼んでしまう。ぷつんとシルヴァの中で何かが弾けた。


「ちょっと若いからって好い気になってんじゃねぇぞゴルァ!!」


「シルヴァ様……! どうかご自身のキャラクターを御守りください!」


 茶化すようにあっかんべーをするアイリーンに殴りかかろうとするシルヴァを止めに入るピアズ。その間エインは何も出来ずにオロオロしている。


「なんで女の喧嘩って見てて面白いんだろーね、姉さん」


「シャーロ、正直に言っては駄目ですわ。犬と猿には牙があるのですから。噛まれでもしたら大変ですわ」


 シャルロットがシャロンの口元にそっと手を当てて食堂の席についた。他のみんなも馬鹿らしくなったのか、それぞれ着席していつもの朝ごはんを食べた。その様子を見ていた魔王ディオウスとランランは、


(本当に仲が悪いのね、あの四人。まるで見世物のようで面白いわ)


(あぁ。仲間達も呆れているようだ。我らの勝利だ)


 とひそひそ話をしながら、ゆっくりと彼らの様子を窺っている。エインの考えた作戦が些細な事から事実になってしまった。そうこうしているうちに朝ごはんの時間が終わる。リンリンが怒号の叱咤しったをあげると一時休戦。エインたちは冷凍コロッケ製造所へと向かって歩いていった。

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