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湯船での噂話(男湯)

※この物語はフィクションです。

 絶対に真似しないでね!

 ――男湯――


 エインがぶつくさ言いながら髪をわしゃわしゃ洗っていたところ、ぺディシオンが彼の隣に座り、シャンプーを手に数滴押し出しながら、


「……ちょっと話がある」


 と小声で言いだす。魔王ディオウスの息がかかった状態のぺディシオンは、アイリーンが心底エインに愛想をつかしていると愚痴をこぼしていたという嘘をついた。そして、彼女が裏で女性陣たちにエインの恥ずかしい話を暴露しているという嘘もつく。


「え、ボクがビッグスライムに怯えてお漏らししたことバラしたの!?」


「ふっ……聞こえているぞ、田舎者勇者」


 ピアズが湯船の中でそう言うと、マカロたちもクスクス笑っていた。それが恥ずかしくて恥ずかしくて、耐えかねたエインは、髪を洗い流したあと、急いで顔と身体を洗い、湯船には入らず、その場を去る。そんな様子を見ていた魔王ディオウスは、ぺディシオンに、そっとめくばせをした。魔王ディオウスのまじないにかかったものは、彼の思っているように動く。ぺディシオンも、さっとシャワーをした後、エインのあとを追うように、風呂場から出て行った。


「ぺディシオンがなんだか最近おかしい気がするが、気のせいか?」


 マカロがそう言いながら湯船の中に入ると、一気にお湯の量が少なくなる。シャロンとコーリンは、お互いの顔面に向けて本気でお湯の掛け合いをしていた。その水しぶきを避けながら、ピアズがマカロの言葉に耳を傾ける。


「私はお前達と旅を共にしたことがないためわからないが、ぺディシオンはもう少し寡黙だったように思う……そう言えば、“あの女には気をつけろ”というような事をエインに話していたが」


「あの女?」


 マカロが腕を動かして、口元に手をやると、それだけで湯船のお湯が減った。


「もしかしたらエインってば、アイリーンよりランランさんの方が好きになっちゃったのかもねー。姉さんから聞いたんだ。ぼくたちが最初に天国ここに来た時に、エインがアイリーンに挽肉器ミートチョッパーで手をミンチにされたんだって。それに、食堂での揉め事もあったし……」


「俺が配送しに行っている間に色々あったんだな」


 額に汗を浮かべるマカロ。シャロンがお湯掛けをやめて、彼らの会話に混ざると、コーリンは、お湯の中に口をつけてぶくぶくと泡を立てながら、拗ねるようにシャロンを睨みつけている。魔王ディオウスは、こそっと風呂場から出ると、薄ら笑いを浮かべて、自室の中へと入っていった。一連の様子を静かに見つめていたのはアヴァロである。彼も、人知れず風呂場から出ていった。その後の会話は、マカロがエリッサに恋をしているのではないかという、恋愛話になった。マカロは顔を真っ赤にしながら、


「ただ見つめているだけで元気になれる。それだけだ」


 と言い訳をしている。そんな彼をからかうように笑うシャロンとコーリン。二人の笑い声が重なると、真似するなとでもいうかのように、黒い空気が立ち込めた。


「あまり長湯しているとのぼせる。もうお開きにしよう」


 ピアズが仕切るように湯船から出る。そのあとを追うかのように、みんなも風呂場から出て、自室へと戻って行った。湯船に残っていたお湯は、三分の一程度であった。

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