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リンリンとランラン

※この物語はフィクションです。

 絶対に真似しないでね!

 リンリンたちがクレーム処理室に着くと、エインたちが受話器越しにランランの話しを聞いている。そして、リンリンの姿が見えると彼女に複雑な表情をして受話器を渡した。エインたちはそっと聞き耳を立てる。どうやらランランがゲキヤスフーズで働いているのは、祖母であるリンリンへの反抗心であったらしい。他の誰よりも自分にきつく叱るリンリンに耐えられなかったのだ。それに加えて、へヴンズフーズの大量解雇。いつのまにか若者に厳しかった彼女についてくる若者は誰一人いなくなっていたのである。シュンシュン等のおばちゃんたちをのぞいて。


「どうして急に連絡なんかよこしてきたんだい」


「……美味しいコロッケを食べたら、おばあちゃんの姿を思い出しちゃって」


 照れくさそうに話すランラン。そして彼女は再びヘヴンズフーズで働きたいと言いだしたのだ。何人かのゲキヤスフーズの若者と一緒に。要するに魔王ディオウスの言葉とは反対に、元通りの関係になりたいということである。それを聞いてリンリンは


「別に私は構わないよ。戻って来たいなら戻ってきな」


 と、少し頬を緩めて言った。受話器越しではあるがリンリンの心境をなんとなく理解したランランは、クスッと笑いながら、面接の日程についてを話し始める。予定は5日後の午後に決まった。ちょうどエインたちが休憩の時間帯である。興味を持った彼らは、いろんな想像をした。どんな天使ひとが来るのであろうか。エインたちは面接日にこそっとその場を覗こうと、会話の邪魔にならないようにそっと耳打ちをし合った。そしてたわいもない会話が続いた後、受話器は置かれた。


「ディオウスめ。また嘘を吐いたな。ボクたちが懲らしめなきゃ」


「同感だ。天使ひとの心を利用する卑怯さは私も許せない。裁きを下さねば」


 エインとピアズの意見がここに来て初めて一致する。クレーム処理室の扉越しでこっそりと様子を窺っていた魔王ディオウスはビクビクしながら彼らを見ていた。しかしリンリンは


「あいつより許せないのは、()()()()を盗んだ奴さ」


 とだけ言って作業場へと戻っていく。慌てて扉の側から離れる魔王ディオウス。エインたちは首を傾げながら自分たちの持ち場へと戻った。気配に気づいたのか、アイリーンは


「次に嘘吐いたら針千本飲ますわよ」


 と、隠れている魔王ディオウスに吐き捨てる。彼女なら本気でやりかねない。彼は誰もいなくなると、クレーム処理室に戻り真面目に鳴り響く電話の応対をしていった。ちらほらだがアヴァロの歌の力で美味しくなった冷凍コロッケに対する反応も見られる。そのおかげか魔王ディオウスは精神的に落ち着きを取り戻していった。また新しい作業員が増える。昔のヘヴンズフーズの冷凍コロッケ製造所がどのような感じであったかはわからないが、活気を取り戻してきているのは確かだ。新人が来ると噂を聞いたおばちゃんたちは、みんなキラキラした目をしている。そんな様子を見たエインたちもやる気が出てきた。噂を耳にしたぺディシオンたちも、どんな天使ひとが来るのかに興味を持ったようだ。面接日まで冷凍コロッケ製造所内はその話題で持ちっきりであった。

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