新品の2年生 39
いいコンディションだ。
レコーディングするのにもってこいの状態。
自分でもわかるくらい血液が沸騰している。
車のエンジンみたく高回転で唸っているようだ。
私は立ち上がりベースのストラップを肩にかける。
「嬢ちゃん一回弾いてみてくれ」
いつの間にか店長はレコーディングスタジオの外で機材の調整をしていた。
接続の確認をする為、弦を鳴らす。
低く空気が震えるのを感じとれる。
“いい感じ”
なんとなくだがそう思う。
思えばこの1週間色々な事を考えた。
自分がわけがわからないくらい迷子になっていた。
散々迷ったけど答えを見つけられたのだから良かったのかもしれない。
バラバラにした自分の中のパズルのピースの1ピースをやっと見つけた気がする。
「オッケーだ。嬢ちゃん準備できたみたいだな」
店長はコーヒーカップを私に向けた。
その意味を悟った私も拳を真似をしてまっすぐ店長の方に向ける。
“乾杯”
カップは持っていないが、コーヒーカップが重なる音がした気がする。
だが、先輩たちには聞こえてはいないだろう。
相変わらず店長は粋でかっこいい。
真っ白なベースを撫でる。
まだ何もしていないのに感慨深い気持ちになる。
ここからが1歩目。
軽く足に力を入れる。
車のアクセルを踏むかのように。
このバンド初めてのレコーディング本番。
別に期限が決まっているわけではないのだが、ここを本番にする事に決めた。
それはメンバー全員で決めた事。
「みんな準備出来たか?」
今岡先輩の声に顔を見合わせ頷く。
もちろん出来ていると言わんばかりの顔だ。
「ならいくぞ!」
店長は指でカウントをする。
3.
2.
1,
大きく深呼吸
店長が手をおろした




