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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 36

楽器のチューニングや機材の調整はいつも気を使う。

同じ様にやっていても、毎回音が違って聞こえるからだ。

湿度や温度によっても音が変わってしまうのだろう。

プロのバイオリン奏者が立ち位置が違うだけで、音が違うと言っていた。

その感覚と比べるのもおこがましいが、楽器を弾く様になった今その意味が少しだけわかる気がする。

先輩達も細かく調整をする時は真剣だ。


とりあえずの楽器の調整は終わり、私はペットボトルの水に手を伸ばす。

今日の水は冷えていない常温の水だ。

飲んだ時の爽快感はないが仕方がない。


「とりあえず、一回合わせてみるか」

今岡先輩は自分の椅子から立ち上がる。

それを合図にそれぞれが楽器を構える。

レコーディング前のリハーサルを開始した。


“おいおい…なんだこりゃ”

今岡は驚いていた。

演奏を始めてすぐ位から、明らかに下の音が安定している。

ドラムの横井が上手く支えてくれているのは知っている。

だが、いつもより横井のドラムが軽快だ。

横目で隣をみる。


“柄本か影響してるみたいだな”

柄本の調子がいい。

いつもは周りの音を聞こうとし過ぎて、自分の音を出せずにいる彼女。

だが、今日は自分の世界に入り込んでいる。

確実に1週間前とは違う。


今岡は柄本がこの1週間必死に練習したものだと思っていた。

まさか、ダンスの練習に必死になっていたなど知る由もない。


ベースの調子が良くなればドラムも余裕が出てくる。

だから、横井も自分の演奏に集中出来ている為土台がしっかりとしていた。


コーラスもしっかりとはまっている。

何より歌っていてはまった時の音の響きが心地いい。

なんとなく、柄本と同じ様な方向を向けて歌を歌えている気がする。


“この感じのままレコーディングにいきたいな”

本当ならもう少し練習してからと思っていた。

だが、周りの調子を見るにこのまま本番に行った方がきっと良い気がする。

この良い集中力を切らしたくない。

そう思った。


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