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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 35

「なんかこのスタジオ綺麗になってないか?」

豊田先輩はレコーディングスタジオを見渡す。

先週このスタジオを使った時は所々埃が残っていたり、汚れが付いたりしていた筈だ。


「店長が掃除したんじゃないか?俺たちが夕方から使うって知ってたわけだし」

横井先輩は話半分、ドラムの調整半分で答える。


「まあ、言ったら悪いけどこのお店暇そうだしあり得る話だな」

豊田先輩は笑っているが、店長にこの話を聞かれたらどんな顔をされるだろう。

それを想像すると少し怖い。


ちなみにこのスタジオを掃除したのは私だ。

昨日ダンスの練習を少し早めに切り上げ掃除をしていたのだ。

明日自分達が使うと分かっていたから。


お世話になった場所は自分達で綺麗にする。

私はそう教わって来た。

アイドル時代、レッスンスタジオは自分達で掃除していた。

しかも、フロアだけでなくシャワールームや更衣室、はたまたトイレまでありとあらゆる所も全てだ。

加入した時、ダンスレッスンと同時に掃除の仕方も一緒に指導された。

最初はダンスよりも掃除の方が大変で、よく怒られたのを覚えている。


“2期生達も今頃苦労してるだろうな”

きっとキャプテンの檄が飛んでいるはずだ。

私は卒業後、メンバー達から2期生に掃除を指導していると聞いた。

メンバーの中で掃除に一番うるさいのはキャプテンだ。

最初はみんなで掃除が嫌でどうサボるかをよく考えていたのに。

こうやって伝統は受け継がれるものなんだなと思うと胸打つものがある。



そんな事を考えながら掃除をしていた。

やはり綺麗になると気持ちがいいし、自分達の場所に愛着を持てる。

ましてや、翌日はレコーディング。

その時は楽器には、全然身が入っていなかったが、掃除は無心で黙々と行っていた。

今思えば自分でも善い行いをしたと思っている。


綺麗になったレコーディングスタジオ。

いつもより、先輩達の気分も上がっている様に見える。

楽器を調整する手も何処となく軽快だ。

そんな風に思えた。

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