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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 34

潜り込んでいく。

音の中に。

それは、私にとって久しぶりの感覚。

自分でも驚くくらい、ベースが弾けている。

全くと言っていいほど練習していなかったのに。

その期間の遅れを一気に取り戻していくようだ。


ノートに書いたことが今なら分かる。

情景が浮かんでくる。

夕方踊っていただけあって良いイメージが保てている。

楽器を弾くということに慣れていない私は、曲へのアプローチの仕方をすっかり忘れてしまっていた。


“ひとつのことに集中し過ぎちゃうのが悪い癖だよね”

自分の不器用さは相変わらず。

でも今日はそれを責める気にはならない。

それも、自分だからと思えているから。


楽器を弾くのが楽しい。

早くレコーディングしたい気分になっている。


時刻は夜11時

明日も学校はある。

そろそろ寝支度をしなくてはいけない。

だけど、寝たくない。

まだ、楽器を弾いていたい。


“気持ちだけ走っててもダメ”

気持ちを抑えベースをケースに収める。

これも私が経験して学んできた事。

やりたい時に無茶をしてもろくな事はない。

特に不安や興奮しがちな本番前日は大人しくしているのが一番良いのだ。

ギターケースの蓋をしっかりと閉める。


寝支度をこなし、ストレッチを開始する。

これもずっと続けている習慣だ。

身体をリラックスさせていくと同時に、隅々まで感覚を行き渡らせていく。

こうしていると、眠気が徐々にやってくる。


電気を消し、ベットに潜り込む。

真っ暗な部屋に月明かりが入り込みまっすぐ扉まで伸びる。

スポットライトというには少し寂しいが、優しい光だ。


“レコーディング終わったらまた店長のオリジナルブレンド飲みたいな”

真っ直ぐに月明かりが真っ暗なコーヒーの中に混ざるミルクの様に淀み出す。

私は眠りの中に沈んでいった。

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