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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 33

「誰をイメージしてるって事はないんです。多分、入り込んでしまうんですよ。曲の物語の中に」

表現方とでもいうだろうか。

表情で魅せる魅せ方をずっと意識している。

それは、母の影響だ。

社交ダンスを競技として行っていた母。

表情は受け手に全体の印象を決定付ける。

そう教わった。


笑顔を振りまいているだけがアイドルじゃない。

最近は色々な曲を歌う。

可愛い歌から、今回の「インストールin」の様にかっこいい曲まで幅広い。

だからこそ、曲の意図を読み取りどう表現するかという所はとても大切になると思っている。


「なるほどな。集中すると潜れるタイプか。ミュージカル女優みたいなもんで」

店長に言われハッとする。


“萌ってさ、踊ってる時何かになりきってる時あるよね。ミュージカル女優みたいに”

あの人にも同じ事を言われた事を思い出す。


私は上手く踊ることを様になる事を考えたことがなかった。

歌の物語の登場人物の1人になりきる。

その事ばかりを考えていた。

なりきるためには、他の登場人物がどの様な人物か知る必要がある。

だからこそ、色んな人になりたくて様々なポジションを練習していた。

他人から見た自分と、自分から見た自分は違うから。


私にとって踊るとは、本を読むのと一緒。

物語を読み解くことが好きなのだ。


音楽をやりたいという漠然とした夢を実現する。

その事に対し、そんな難しく考える必要なんてなかった。

迷っている暇なんなんてない。

だって私は、このバンドの曲が好きで今ここにいるのだから。


「店長コーヒーご馳走様です!美味しかったです!あと、バームクーヘンもありがとうございました!」

コーヒーを飲み干し、バームクーヘンの残りを口に放り込む。

そして、勢いよくベースのケースを背負い店を出る。

自転車に乗り込み風を切るように走り出す。

口の中に残るコーヒーの苦味が心地いい。


「嬢ちゃん苦味のとれたいい顔してたな」

春風になって駆け抜ける様に店を出て行った柄本を見送ると店長は呟く。

そして、少し配合を変えたオリジナルブレンドコーヒーを飲み笑みをこぼした。

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