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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 27

鏡に映る私は踊っていた。

ここは、自分の家ではない。

ギターラックやレコーディング機材が並ぶ場所。

ここには大きな鏡がある。

その鏡と私は向き合っている。


23区トウキョウNEWSingle

「インストールin」


この曲を覚える必要もなければ、使う場面もない。

だが、もう3日間この場所に来て踊っている。

私が居るのはレッスンスタジオなんかではない。

楽器屋RACKの地下スタジオだ。


すでに前列のメンバーの振り付けは頭に入っている。

普通なら録画した番組を擦り切れるほど観て学んだという所なのだが、私の場合少し違う。

私のアイドル時代親しかったダンスの先生にこっそりダンスの模範動画を送ってもらったのだ。

もちろん、商売目的には使わない。

誰にもその事を言わないという約束でだが。


これがバレたら機密情報の漏洩でダンスの先生に迷惑がかかってしまう。

それだけに、先生の信用を裏切る訳にはいかない。

まあ…披露する場はないのだから、バレることはないだろう。


この3日間スタジオには誰も来ていない。

ただ1人で踊り続けている。

スタジオを借りたいと言った時も店長は何も言わずに貸してくれた。


私は家ではダンスの練習をした事がない。

いつもレッスン部屋か、お母さんが働いてる社交ダンス教室の空き部屋で練習していた。

だがアイドルを辞めた今、社交ダンス教室にお世話になる訳にもいかず、大きな鏡のある防音対策のしっかりした場所を探した結果ここに行き着いたのだ。


あの人が踊っている姿を見てから、私は無性に踊りたくなっていた。

今までの習慣だったダンスを踊るという事をやらなくなったら、ダンスが恋しくなってしまったのだ。

ベースを弾いているだけでは満たせない欲求。

また違う自分が顔を出した。


「布団に入るふりをして、ブルーライトに飛び込む。もう1人の自分が歩き出す。クラスメイトも知らない自分が」

「インストールin」がパソコンから流れている。


3日後には本番のレコーディングをする。

だが、ダンスは練習したい。

私の葛藤は続く。

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