卒業のあと 7
そんな彼らとの出会いは今岡先輩に再会したところから始まる。
今から1年前の5月。
場所は名古屋の中古CDを扱うお店。
邦楽、洋楽、HIPHOP、レゲエなど様々なジャンルのCDが年代問わず置いてありいつも掘り出し物を探しに来ていた。
その日は、企画で80年代のアイドルの歌を歌うことになった為、そのCDを探しに来ていた。
“あの時代ってCDあるのかな”
それすら曖昧だったが、とにかく物色していた。
ネットで探せば早いのだが、実際に触れ色んな音楽を発見出来るのが楽しみでもある。
そんな事を考えながらCDが綺麗に陳列された棚を見ていた時だった。
不意に肩を叩かれ、驚いて肩がビクッと動く。
油断していた。
学校の帰りに寄ったため制服だし、化粧も薄め、完全にオフモードで誰からも気づかれないと思っていた。
軽くパニックだ。
職業柄ありがたいことに、声をかけられる事はある。
ただ、いきなり肩を叩く前に声をかけるべきではないか。
その不機嫌な気持ちを心に抑えつけ、無理やり笑顔を作り振り向く。
振り向いた先には高校の学生服を着た男の子がいた。
「………」
口は動いているが声が聞こえてこない。
“あれ?”
そのことに違和感を感じて気付く。
耳にヘッドホンをつけていたのを忘れていた。
声が聞こえてこないのも当たり前だ。
さっきまでの自分が恥ずかしくなる。
「やっと気付いたな」
声を掛けてきた人物が苦笑いをする。
見たことのある顔、いやむしろ変わっていない顔。
「今岡先輩⁉︎」
思わず大きな声を出してしまう。
静かな店内に響く私の声。
幸い棚で仕切られている為、周りの視線は感じない。
「なんでこんなとこにいるんですか?」
学校を転校して2年と少し、久しぶりの再会。
地元ではなく名古屋の、しかもこんなマイナーな店。
驚くなという方が無理だ。
「それは俺が言いたいわ!」
ごもっともである。
そんなやりとりをしているとなんだか可笑しくなってきた。
怒ったり、驚いたり、笑ったり、感情の変化が忙しい。
気づけば今岡先輩も笑っていた。