新品の2年生 25
珠紀が映り出される。
この中でも負けない存在感を放てるのが珠紀の凄い所だ。
相変わらずダンスにもキレがある。
曲はサビに進むがあの人は映らない。
サビでは、ローテーションがないため後ろの方のメンバーは映されにくい。
だから、あるとすれば大サビ前のCメロ位だろう。
そこを逃せばもう映ることはないと思った。
だが、曲が間奏に入った時だった。
その時はいきなりやってきた。
だが、あの人が抜かれた訳じゃない。
抜かれたメンバーの後ろに映り込んだだけだ。
時間にして2秒。
他人からしたら、ただの背景の一部かもしれない。
それでも、私の目にはしっかり映っていた。
そしてCメロに入る。
メンバー全体が映し出される。
見間違う訳がない。
3列目にいるあの人を。
珠紀程ではないが、ほかのメンバーと遜色ないダンスをしている姿を。
満足だ。
時間にしたら短かった。
だが、どれだけあの人が頑張ったか分かったから。
背中を見続けていた私だから分かる。
ちょっと自信過剰だが、自分の中で納得できるものが見れた。
だから、満足だ。
大サビになる。
相変わらず、抜かれるのはフロントメンバー達。
市川双葉含め、フロントメンバー5人は不動のポジションになっており、五芒星からとってペンタグラムと呼ばれている。
一筆書きの様に、5人で一つの星を作る様に。
23区トウキョウの中で光り輝く星なのだ。
今画面に映る珠紀もその光を追い続けている。
正確には、珠紀達もだ。
ペンタグラムを越えることは、16区ナゴヤの最大の目標だから。
その為に珠紀は1人、選抜の中で頑張ってきたのだ。
だけど、今は1人じゃない。
あの人がいるのだから。
“私も輝かないとな”
もう同じ夢を追う事は出来ないけど、私には新しい夢がある。
まだ漠然としているし、一歩目を踏み出したばかりだが。
それに向かっていくやる気を与えてくれた様な気がする。
"生で観れてよかった”
偶然リビングに降りていった自分の気まぐれのファインプレーに自分で賞賛していた。




