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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
78/417

新品の2年生 24

この曲の選抜は18人

23区トウキョウとしては少ない人数編成だ。

だが、この中でカメラに“抜かれる”人数は更に少ない。

抜かれるとは、ピントを合わせメインでカメラに映っている状態の事だ。

仮に抜かれても映っていられる秒数は人によって全く違う。


この日も、最初に抜かれたのはこの曲の、いや、23区トウキョウのセンター。

続いて、フロントメンバーが次々と抜かれていく。

当たり前の事だが、人気のあるメンバーが沢山映る。

結果として、フォーメーションが後ろの方のメンバーは映されにくくなる。

1秒映ればいいという日さえあるくらいだ。


“やっぱり双葉さん流石だな”

やはりセンターが一番多く抜かれている。


市川双葉(いちかわふたば)

23区トウキョウの初期メンバーにして、絶対的エースでセンター

グループ1の人気を誇り握手会は即完売。

写真集も7回目の増版が決まっている。

身長は160センチ前後で髪型はショートボブ。

雑誌の専属モデルにして、ドラマにも出演し女優としても活躍の幅を広げている。


だが、私が今見たいのは双葉さんではない。

テレビから一番近い所でかじりつく様に画面をみながら、あの人の姿を探す。

何回も選抜入りしている珠紀ですら、1回しか抜かれない日があるくらいだ。

もしかしたら、一瞬しか映らないかもしれない。


だけど、一瞬でもいいから選抜で踊っている姿を見たい。

それが、私の今の気持ちだ。


想像通り今回のシングルは格好良さを追求したダンスナンバー。

フォーメーションの入れ替わりがそれなりにある。

メンバーが次々と入れ替わるのを目で追いながらダンスの振り付けを確認する。

自然と身体が動く。

画面越しにみているダンスを身体に覚えさせようとしてしまう。


“あの人はこのダンスを覚えたんだ”

誰もいないレッスン部屋で鏡の前で1人ダンスをする姿を想像する。

どれだけの時間鏡の中の自分と向き合ってきたのだろう。

その姿を見れば答えを知ることが出来そうな気がしていた。

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