表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
77/417

新品の2年生 23

先輩達のバンドに自分の声が入っている。

それは少し不思議な感覚だ。

自分の声は聴き慣れている。

しかも、いやという程演奏した曲なのに。


一つの形にしてみると、色々な感情が湧き出て来る。

それは恥ずかしさであり、嬉しさであり、悔しさであったりする。

まだ、仮レコーディングの段階。

やり直したい事は大いにある。

だが、形に出来たという達成感も少しある。


客観的に自分の演奏を反省する自分と、主観的に自分が演奏しているのを喜ぶ自分。

2人の自分が頭の中で別々の感想を述べている。

でも、鏡を見ても自分は1人しか映っていない。


“ホラー映画じゃあるまいし、居たら怖いよね”

当たり前の事に笑ってしまう。

ヘッドホンを外し、自分の部屋から出る。

喉が渇いた為、リビングに向かう。


リビングでは父と母が2人でテレビを見ていた。

テレビでは、音楽番組が流れていた。

その光景を何気なくみながら台所にある冷蔵庫を開けお茶を出す。

柄本家ではペットボトルではなく、沸かしたお茶を容器に入れて冷やしている。


「続いては今や国民的アイドルグループとなった23区トウキョウ!今日は新曲を披露してくれます!」

私はお茶の容器を置き、慌ててテレビのレコーダーを操作し録画ボタンを押す。

父も母も、あまりにも突然の出来事に固まってしまい置物の様になっていた。


素早く動いたおかげで、曲が流れる前に録画操作が終わった様だ。

テレビには歌う前フォーメーションで並んでいる先輩達。

それぞれがシックな格好の衣装を纏っている。

今回は格好良さを追求している様だ。

衣装を見れば大体曲のテーマが分かる。


お茶の入った容器は台所に置いたまま。

周りについた結露が容器を這う様に、私の額に滲んだ汗が頬を這う。

汗が這う音が聞こえる。

床に落ちる音も。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ