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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 21

ラストのドラムの音がスタジオに鳴り響く。

その余韻に浸る間も無く、楽器の音を止める。

そして、一斉に店長の方を見る。


「まあ…オッケーだろう」

店長はヘッドホンを外す。

その言葉を待っていた私達は、一気に肩の力が抜けていく。

アンプの電源を落とし、楽器をギターラックに置く。

その一連の動作がシンクロしたかのようにメンバー全員が同時に行なっていた。


「とりあえず、レコーディングって作業は緊張するな」

豊田先輩はペットボトルの無糖の紅茶に手を伸ばす。

緊張から解放されたのかテンションが高い。

ただ、私も、横井先輩も、今岡先輩も楽譜にメモをしていて全く聞いていない。


「お前ら、よく冷静にメモできるな。せっかく終わったのに」

その事に気付いた様で立ち上がって私達に歩み寄ってくる。

その額には汗が滲んでいるところから演奏に集中していたのがわかる。

だが、豊田先輩は知らない。

レコーディング作業は一発では終わらない事を。


「どうする?もう一回やるか?」

店長がその事を察したかの様に私達に語りかける。

私達3人は顔を見合わせ頷く。

そんなの答えは決まっている。

準備をするためと立ち上がり楽器へと向かう。


「やりませんよね?」

豊田先輩は私達の行動を遮る。

話をするその顔は冗談ではない様だ。


「なんかお前らメモとって次に行こうとか考えてたみたいだけどさ、さっきのテンション保てるのか」

その刹那、指が動かなくなる。

今まで何回もレコーディングしてきた経験がある。

だからそれが当たり前の事だと思っているし、やればやるほど良くなるものだと思っていた。

今岡先輩も、横井先輩もその気持ちでいる事 は言葉を交わさなくてもわかる。

だが、それは私個人の認識。

人によって考え方は違うのだ。


私にとっての当たり前は、他人にとっては違う場合がある。

今その事を思い出した。

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