表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
74/417

新品の2年生 20

「準備出来たみたいだな。こっちも調整終わったからいつでもいいぞ。」

店長の言葉に促される様にヘッドホンをつけマイクの前に立つ。

この緊張感は久しぶりだ。


「じゃあ、やってみるか」

今岡先輩の声がいつもとは違う。

先輩も緊張しているのだろうか。

メンバー全員が店長の合図を待つ。


マイクの前で始まりを待つ、この時間はいつも空気が引き締まっていた。

場所が変わっても、あの頃とは立場が違ってもこの時間は変わらない。

店長がゆっくり手を挙げ、私達の方にゴーサインをだす。


一瞬のアイコンタクト

そして、身体で拍をとる。

第一音は変わらず豊田先輩のギター

その音は変わらない。

いつもの音だ。


聴かせたい人がいると私は言った。

本当は先生が聞いてみたいと言ったのだから、私の言った事は間違いなのかもしれない。

でも私は、本心でその言葉を言った。

聞いてもらいたい私達の曲を。


誰かにきいてほしいと豊田先輩は言った。

私の場合、その誰かが鳩崎先生なのである。


“これまでで一番集中出来てる”

実感がある。

冷静に周りの音が聞こえる。

今までは、先輩達について行くので必死だったのに。


曲はサビに入る。

今の所ミスもない。


コーラスの私は今岡先輩の声に声を重ねる。

その瞬間、先輩と目が合う。

目が合ったのは初めてかもしれない。

お互いに少し頬が緩む。

少しだけ肩の力が抜けるのを感じる。


更に曲は進む。


“気持ちはいつも快晴”

“猫が家垣に登る”


新しくした楽譜には、重要なことしか書いていない。

一応、レコーディング前にもノートを読み返し復習はしておいた。

頭の中でイメージが浮かんでくる。


ラストサビが近づく。

相変わらず先輩達に引っ張られているが、いつもよりミスは少ない。

気がつけば、足元に機械があるとかそんな事に気を取られなくなっていた。


そしてラストサビ。

終わるのが、少し寂しい気もするくらい集中できている。

決して完璧ではない。

だが、少なくとも今までで一番まともな仕上がりになっているとおもえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ