表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
73/417

新品の2年生 19

私は焦っていた。

いつの間にか店長も今岡先輩もいなくなっていたらか。

慌てて階段を降りスタジオに向かう。

その光景を見て愕然とした。

マイクが何本も立ててあり、先輩達は機械にコードを接続していた。

それが、何を意味するか知っているから。


「あの…別に今すぐやろうって言った訳じゃなかったんです。自分でレコーディングをしたいと言いましたが、そんなに焦ってやらなくてもいいじゃないですか」

無駄な気もするが抵抗してみる。

駄目だとしても一応挑戦してみないと結果は分からないから。


「そうだったのか。でも準備もしたし、どうせ覚えなきゃいけないんだから、いい機会じゃないか」

私の抵抗は数秒も検討されることはなかった。

店長が言っていることがあながち間違っていない。

私は攻め手を失ってしまう。

悪い意味で想像通りだ。

だが、この感覚は懐かしい。

先生のせいで、無茶振りには少し慣れてしまっていた。

ため息をつき、ベースの接続に入る。


アイドル時代にもレコーディングは何度もあった。

その時は、流石にメンバー全員でレコーディングする訳ではなく、何人かに分かれて行なっていた。

基本的には、1人づつ一曲全部歌い、ハモりが必要な部分はパート毎に一緒に歌い声を合わせる。

レコーディングをする中で、パート割りが変更になったりすることもあり時間がかかった記憶がある。

曲を作るということの大変さをそこで学んだ。


接続が終わり、試し弾きをする。

店長にパソコンにしっかり接続しているかを確認してもらう。

その間、私は考えていた。

まだ、納得いっていない状態。

自信を持ってレコーディングに挑める訳じゃない。

なのに少し気持ちが高揚している。

自分でも不思議に思う。


真っ白なベースに繋がるコードの束。

足元は機械だらけで落ち着かない。

この落ち着かない気持ちは機械ではないかもしれない。

これから始まることが、少し楽しみになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ