新品の2年生 16
私が今岡先輩を追いかけて慌てて出て行った頃、横井先輩と豊田先輩はの2人はスタジオに取り残されていた。
「なんか柄本って真面目だよな。俺たちに対しても、音楽に対してもさ。」
さっきまで喋っていなかった横井が口を開く。
さっきまで無表情だったのが、嘘のように笑っている。
「確かに。馬鹿正直過ぎて真顔でいるのに必死だったよ。」
豊田も笑い出した。
2人共、柄本の発言に対してわざと真顔でいだのだ。
「いつも、この3週間会う度に上手くなってるし、相当練習したんだろうな。」
「確かに。常に納得出来ないって顔してたし、メモ取り過ぎて楽譜に書けなくなったのかノートになってるし。」
横井の言葉に対して豊田が付け足す。
柄本の頑張りは3人とも認めていた。
だが正直、前にいたベース担当より技術的には劣っている。
初めて柄本がこのバンドに来た時、これでやっていけるのか不安になった。
この子で大丈夫なのだろうかと。
ライブハウスでのイベントライブまで1週間しかなかった時だったので、だいぶ焦りがあった。
だが、柄本は1週間でみるみる上達していった。
その結果、なんとかステージに立てるクオリティに仕上がり披露することができた。
柄本が相当練習したのだろうという事は、手を見れば明らかだった。
彼女の手はテーピングだらけになっていたのだから。
「なんかあいつを見てるとさ、このバンドにそれだけ魅力あるのかって思うよな。」
横井はそう言いながら思い出す。
元々同級生4人で結成したこのバンド。
結成した理由は、学園祭で演奏するという在り来たりな理由よりもくだらない。
ただ、バンドをやって見たかったそれだけだ。
たまたま、楽器好きな人物が4人揃った。
ただ、それだけの理由だった。




