新品の2年生 15
「この曲レコーディングしませんか?」
私は姿勢を正す。
「実はこの曲を聴かせたい人がいるんです。だから形にしたいと思って。それに、私にとっても初めての曲なので思い出に残したいですし。」
先輩達の反応を確認する。
が、ほぼ無表情に近く気持ちを読み取れない。
「そういえば、そんな事考えた事もなかったな。柄本が入ったら、俺たちと違う考え方するから新鮮。」
豊田先輩はそう言いながら、椅子に座る。
「レコーディングした事ないんだよな。おじさんなら分かるかな?」
頭を掻きながら今岡先輩は立ち上がりスタジオの扉を開ける。
「あ!今すぐにって事じゃないんです!もうちょっと曲の完成度が上がってからでいいので。」
私は慌てて止める。
だが、聞こえていないのか今岡先輩は出て行ってしまった。
「今岡先輩!待ってくださいよ!」
急いでスタジオを出る。
結局先輩達がどの様に思ったのかは読み取れなかった。
思ったより反応がない為拍子抜けしてしまった。
だが、レコーディングする気にはなってくれた様だ。
今岡先輩の後を追って1階に戻る。
すでに、先輩は店長と話をしていた。
「そりゃ出来るに決まってるだろ。俺の造ったスタジオだぞ。」
相変わらず、無地の白シャツにインディゴブルーのジーンズ。
やっぱり、渋くてかっこいい。
「流石おじさん!柄本がレコーディングしたいって言うし、いい機会だから俺もやり方教えて欲しいんだ。」
店長に気を取られている隙に話が進んでしまっている。
確かに、レコーディングはしたいとは言ったが今すぐにではない。
「いいぞ。今からやるか?」
店長はスタジオに降りていこうとする。
お店は開けたままだが、いいのだろいか。
お店の入り口の扉をみる。
そんな風に疑問に思ったが、今までお客さんが来た所は見たことがないから大丈夫なのだろう。
いや、問題はそこではない。
せっかく今岡先輩を追いかけて、1階に戻って来た意味がなくなってしまう。
私は店長を止めようと扉から目を逸らした時、すでに2人共いなかった。




