新品の2年生 12
「気持ちはいつも快晴」
「そんな事あるわけない。」
メモ書きの内容の一部だ。
抽象的で、楽譜を見ていない人には何を言っているかわからないだろう。
あくまで私達が曲を弾く上でのイメージだ。
その為、文章としては意味が分からないものも仕方がない。
自分でノートに写していてもわけが分からない時もあるし、写しながら笑ってしまう時もある。
ただ、楽譜を見ていて思う事は、今岡先輩の曲作りに対するスタンスは変わっていないということだ。
今まで先輩が作ってきた曲は私ではない人がベースとしてこのバンドにいた。
その人の事を私は知らないが、少なくとも私よりは上手いはずだ。
だけど、ベースのパートの難しさは変わっていない。
私のために難易度を下げる事を今岡先輩はしなかった。
その事が私には嬉しかったりする。
私のせいでバンドの方向性が変わる事は嫌だし、先輩達のやりたい音楽を妥協させたくない。
だから、今まで通りでよかったという思いがある。
それに、難しい方がやり遂げた時の達成感が強い。
ノートを写すのに思いの外時間がかかる。
気づいたらノートは10ページを超えている。
それだけ、先輩達と言葉を交わしたという事だ。
先輩達との話し合いは楽しかった。
そして、少しだがメロディなどを変える作業もした。
ちなみにだが、まだ題名は決まっていない。
ペンを持つ手を止めおもむろに自分が着ている制服を見る。
前通っていた学校とは違い、地味。
スカートもブレザーも紺色で、リボンも暗い赤色。
柄もなく、完全に公立校の制服という感じだ。
まだまだ、その地味さに慣れていない。
私は元々派手なものを好むタイプではない。
だが、いくらなんでも無個性な感じがする。
前にも言ったが、私は反社会的だとかカッコつけているわけではない。
ただ、この制服が他人のような気がして、愛着を持てずにいるのだった。




