新品の2年生 9
“本来ここまでやる必要はないのではないか。”
横井先輩が手に持っている自分の楽譜。
メモをしている時思っていた。
私達はプロではない。
ましてや、ライブをすると言っても、小さなライブハウス。
だからこそ、先輩達に楽譜を見せたくなかった。
先輩達と熱量の差があったら怖かったから。
でも、そんな不安は今岡先輩の真っ黒な楽譜を見て吹き飛んだ。
熱量の形は色々あるらしい。
おそらく、先輩達にとって上手く弾くことが大事なのではないのだろう。
少し肩の重さが軽くなった気がする。
そうなると、私のやらなくてはならないことが決まってくる。
「横井先輩そろそろ楽譜返してください。」
横井先輩から楽譜を強引に奪い返す。
そして、自分の座っていた椅子を先輩達の椅子に近づける。
「先輩達、この部分ってちょっとテンポ落とした方が良くないと思いませんか?」
そして、真っ黒な楽譜を更に黒くする作業を開始する。
先輩達に置いていかれるわけにはいかないから。
その後も、音合わせをしたり、話し合いをしたりを陽が落ちで楽器屋が閉店するまでやっていた。
結果、お腹が空きすぎて帰り道を自転車で駆け抜けた。
もしかしたら、今までで一番早かったかもしれない。
「ただいま!お母さんお腹すいた。」
スニーカーを脱ぎ、一目散にリビングに向かう。
すでに、母と父は夕飯を済ませソファーでくつろいでいた。
「おかえり。用意するから、手洗いして荷物置いてきて。」
母は立ち上がり台所へ向かう。
私が遅くなっても、父も母も何も言わない。
アイドル時代から、帰るのが遅かった為もう慣れているのだろう。
むしろ、あの頃よりは早いくらいだ。
私は洗面所に向かい手洗いうがいをした。
体調管理はとても大切な事だから。
台所からは母の料理の匂いがして来ていた。




