新品の2期生 8
「先輩達も楽譜真っ黒じゃないですか。」
手にミネラルウォーターを持ったまま私は立ち上がる。
3人とも、楽譜にぎっしりメモがされている。
しかも、1ページではない。
今岡先輩の楽譜を捲ると、全てのページにメモがなされている。
この短い時間でこんなに出来るわけがない。
私と同じ様にこの1週間、楽譜とギター、ドラムと向き合って来たのだろう。
「大体いつもこんな感じだよ。」
横井先輩は私の楽譜をみながら答える。
なんなら、一番私の楽譜を読んでいる。
そろそろ返して欲しいのだが、そんな事を言える様な雰囲気ではない。
「俺が作っても、半分くらい変わる事あるよな。」
今岡先輩はペットボトルに入った無糖の紅茶を飲みながら私の隣をすり抜け、自分の椅子に座る。
「それは、音合わせしてたらイメージ湧いて来たんだから仕方ないだろ。」
横井先輩はまだ私の楽譜を読んでいた。
私達は素人の集団。
ましてや、作詞作曲をしたのも素人。
今岡先輩の音の選び方は確かに面白いし、驚きも沢山ある。
だが、曲と言ってもまだまだ完成度の低いものだ。
でも、初めて先輩達の曲をライブで聴いた時、しっかりと曲になっていた。
ちゃんと何かが伝わる様な曲に。
それは、こうやって地道な擦り合わせの末に作り上げられたのだろう。
私も練習しながら、気づいた事が沢山あった。
それを全てメモをした結果、真っ黒になってしまったのだ。
だが、メモをしながら何度も手を止めた。
私はそこまで曲作りに詳しいわけじゃない。
ベースを弾くのもあまり上手くないし、この曲すら満足に弾けていない。
所詮、この楽譜のメモは素人の感想に過ぎない。
しかも私は、このバンドに入ってまだ日が短い。
そんな自分と葛藤していた。




