新品の2年生 7
その後、3人ともお互いの意見を出し話し合っていた。
そして、それぞれが楽譜に出た意見を書き込んでいる。
イメージを共有する為だ。
“アイドルの頃を思い出す光景だな”
よくダンスについて、メンバーと話し合いをした。
長い時間が掛かったり、意見が合わず喧嘩をした事もある。
だから、先輩達が話し合っているのを外から見ていて、少し懐かしくなる。
だからこそ、叱ってほしい。
それがわたしの本音だ。
出来ていないのだから叱られて当然。
そうやって今までやって来たし、周りもそれが当たり前の事だと思っていた。
でも今は、それが言えない。
この事がわたしをモヤモヤさせていた。
噛み合わないままの気持ちを隠しながら、私も先輩達の意見を楽譜に書き込む。
「柄本の楽譜メモし過ぎて真っ黒じゃないか!」
今岡先輩は私がメモをしている姿を見ていたようだ。
そして、私から楽譜を取り上げ、ペラペラと捲る。
めくったページは、すでに書き込む事がないほど真っ黒だ。
最初は付箋を貼ろうかと思ったのだが、思いのほか書く事が多く貼るのがめんどくさくなったのだった。
どうせ誰も見る事はないと思っていた。
だから、それを読まれるのはすごく恥ずかしい。
「中身はないですから、あんまり見ないでください。」
先輩から楽譜を奪い返そうと手を伸ばす。
「本当だ。隙間が殆どなくなってる。」
豊田先輩は、それを邪魔するように今岡先輩から楽譜を取り私と距離を取る。
私も躍起になって追いかけるが、楽譜は横井先輩の手に渡ってしまった。
こうなったら、もうどうすることも出来ない。
諦めて自分の席に戻る。
ミネラルウォーターを飲みながら、スタジオを見回す。
各々が持ち寄った椅子の隣にギタースタンドに立て掛けられたギター。
その前に置かれた先輩達の楽譜もよく見たら真っ黒だった。




