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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 2

今日最後のチャイムが鳴った。

そのチャイムは、私には讃美の鐘に聞こえる。

チャイムが私を祝福しているようだ。

私はやりきったのだ。


とはいえ、英語はむしろ得意科目。

好きな事をやっている間は時が経つのが早い。

同じだけの時間の授業のはずなのに何故だろうか。

そんな事を思う余裕も出てきた。


ここからはあっと言う間だ。

HRの時間になり担任の先生が話をし、チャイムと共にクラスメイト達が教室から出ていく。

部活に行く子、家路に急ぐ子、他のクラスに行く子。

みんな思い思いに過ごしている。

私も急がなくてはならない。

周りのクラスメイトに挨拶をし教室を出た。


スニーカーを履き、下駄箱を抜ける。

急いでいたが、一年生達の集団に巻き込まれてしまった。

入学してから1ヶ月しか経っていない彼らはまだまだ高校生活に慣れておらず初々しい。

制服も体に合っていないのかどこか浮いているように見える。


新品の匂い。

まだ微かにその香りがする。


“私も変わらないか”

私も転校して日が浅い。

むしろ、彼らの方がこの学校に先に入学している。

少しずつ慣れてきたが、この学校にはまだ馴染めていない。

私は間が悪い転校生なのだ。


家に向け歩く。

相変わらず私はスニーカーだ。

ふと隣を見ると、お店のガラスに自分の姿が映る。

それをみた私はなんだか笑えてしまった。

完全に制服が馴染んでいない。

制服に着られているという言い方がしっくりくるし、化粧もしていないこの顔はとても幼い。

すれ違う人達には、おそらく1年生に見えているのだろう。


“1年生って言っても間違ってはいないか”

転校してきてやっと1ヶ月が経とうとしている。

制服も、カバンも教科書も新品。

心機一転という言葉があるが、今誰よりもその意味を体現しているのは私だと思う。


心機一転した女は、決して新しくない街中を笑いながら歩くのだった。

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