新品の2年生 1
古典の授業が終わる頃、私のペンは止まっていた。
睡魔に負け夢の中。
春の陽気にあてられ、うたた寝をしてしまった。
ノートの上に顔が横たわっている状態だ。
チャイムの音で起きた時、驚いて身体が揺れた。
そのせいか、どんな夢を見ていたかは忘れてしまった。
覚えていないという事は大した事ないのだろう。
それよりも、先生に見つからなくてよかったと思う。
あと1限で授業も終わりだ。
それが終わったらまた楽器屋RACKに行く。
メンバーで音合わせをする約束になっている為だ。
正直、あまり行きたくない。
人の前で出せるレベルではないからだ。
ベースを初めて一年くらい。
メンバー3人のレベルに比べたらだいぶ見劣りしてしまう。
“先輩達に迷惑は掛けたくないな。”
私のせいでせっかくの曲が台無しになってしまう。
それだけは避けなくてはならない。
今回が初めて私が入った曲になる。
だからこそ、納得できるものにしたいのだ。
まずは、自分の仕事をこなす事。
仕事をする上で大切な事だ。
これが出来なければ、他にどんな能力を持っていてもなんの意味もない。
このままでは、次の授業も集中出来そうにない。
転校して早々、無気力のレッテルを貼られてしまうのではないかと思う。
授業か、ベースか。
今のわたしにとってどちらが大切かと言われると答えに困る。
焦ってもしょうがないし、ベースは今ここにないのだから練習のしようが無い。
“とりあえず、ちゃんと授業受けないとな。”
目の前のことに集中しよう。
気合いを入れる為、すっぴんの肌を手で叩く。
自分に集中しろと暗示をかけた。
次は英語の時間だ。
英語ならきっと大丈夫だろう。
カバンから教科書を取り出したのだった。




