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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 0

カーテンが舞い、心地よい風が入ってくる。

学校の匂いが漂ってくる。

この匂いも段々好きになってきた。


新曲を貰ってから1週間。

学校から帰るとベースの練習を夜遅くまでするという生活をしていた。

おかげで、授業中眠くて欠伸を我慢するのに必死だった。

これだけ、心地よいとまた欠伸が出そうになる。


新曲の初合わせ迄に自分のパートは仕上げておきたくて少し無理をした。

自分のポジションは覚えてから全体練習に入るのがアイドル時代からの習慣だった。

だから楽譜は全部覚えたし、一通り弾けるようになっている。

でも、これでいいというレベルに達していない感じがするのだ。

どれだけ練習しても、その感じが抜けずにいた。


そのせいなのか気持ちがモヤモヤする。

今受けているのは古典の授業だが、全く頭に入ってこない。

先生は定年間近の小さなお爺さんだし、声も小さいし、余談が多い。

周りのクラスメイトも退屈そうだ。


“古典ってつまらないな。趣きとか言われても分からないし。”

黒板には達筆な字で板書がしてある。

見た目と違い字は凛々しい。

だが、ペンはノートに転がっている。

そもそも、曲のイメージも固まっていないこの状態。

古典の教科書の物語なんか全然思い浮かぶ筈もない。


毎日6限まである授業だが、古典の時間は少し時間が経つのが遅い。

そもそも、アイドルでいる間は、仕事やリハーサルなどで授業を抜け出すこともあった。

だから、1週間ちゃんと授業を受けるという行為はほとんどなかったのだ。


でも、これが普通の女子高生。

ちゃんと授業は受けるのが勤めだ。

欠伸を噛み殺し、ペンを取る。


また風が吹く。

まだ5月も半ば、暖かさを少し感じペンを走らせるのだった。

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