表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
卒業のあと
53/417

卒業のあと 52

パソコンの音で我に返る。

どうやら、楽譜のダウンロードが終了した様だ。

青と白の景色から見馴れた部屋に戻され、私は溜息をつく。


いつもの空気を吸う。

いつもの部屋の匂いだ。


結局あの挨拶をした後、舞台袖に戻りながら涙してしまった。

最後まで涙を見せないつもりだったが、ファンの方々の声援を背中に受けるともう堪えきれなかった。

その後、舞台袖に戻るとメンバーが目を腫らしていたのを見てもらい泣き。

さらに、ライブ終了後、号泣しながら花束を渡してくれたマネージャーを見て笑い泣きまでしてしまった。

結局、3回泣いてしまったのだ。

そのせいで、次の日には目が物凄く腫れ顔は別人の様になってしまったのを覚えている。


私の手に持っているのは、最後にみんなで撮った集合写真。

みんな目を真っ赤に腫らしている。

その中で、誰よりもマネージャーが泣いていて笑えてしまう。


あれから2ヶ月、メンバーから連絡が来たり会ったりしている。

だが、あの人には会っていないし、連絡も来ていない。


“楽譜もダウンロード出来たし、練習しないとな。”

床に落ちた写真を全部拾い上げる。

その中の一枚にはあの人と2人で撮った写真もあった。


“あれ?”

写真をひっくり返すと裏面に言葉が添えられている。

細いが丁寧で、形が綺麗な文字。

間違いなくあの人の字だ。


急に窓を開けたくなった。

写真を机に置き、部屋の窓を開け放つ。

解放された窓から顔を出し、新しく空気を吸う。


星が綺麗だ。

空を見上げると星空が煌めいていた。

この街は星が綺麗に見える。


風が私の髪をなびかせる。

私の残り香を纏い、机に置いた写真を飛ばす。

宙に浮いたその写真に写るのは、笑っている自分とあの人。

裏面には細い字だが、しっかり伝わる字でこう書いてあった。


[紅白でまた笑おう]


星の様に私の目元が光ったのを気付かないフリをして沢山の空気を吸うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ