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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
卒業のあと
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卒業のあと 49

こうして私は卒業コンサートの日を迎えた。


まだお客さんが入っていない客席を歩く。

今までコンサートをやってきたが、その中で一番広い会場かもしれない。

そんな中、今回のコンサートのチケットは完売だったらしい。

この会場の客席が全部埋まると考えると凄い事だ。

ステージでは沢山のスタッフさんが慌ただしく動いている。

全員が私の卒業コンサートの為に動いているのだと思うとなんだか申し訳ない気持ちになる。


この場所に、いつか戻って来れるだろうか。

いやもし、この場所でライブをする時が来ても同じ景色ではないだろう。

それくらい今日は特別な日だ。


今日はいつもより少し詩的な気分でいる。

ステージに戻りさっきまでいた客席を見渡す。

今は誰もいない客席がどんな風に色づくかはわからない。

いつも違う色を見せてくれるファンの方達。

今回はどんな景色になるのか楽しみだ。


とりあえず、ステージの真ん中で座ってみる。

1人で座ってみるとその広さが分かる。

こんなにゆっくりステージを確認するなんてはじめてだ。

リハーサルの時間より早く来て良かった。


「ピヨちゃんいたんだ。早くない?」

隣にあの人が座る。


「早いのはお互い様じゃない?まだリハーサルの時間まで1時間あるよ。」

私と同じ時間に来ているなんて思わなかった為、だいぶ驚いている。


「確かに。にしても、大きな会場だね。こんな会場でやれるんだから私達も大きくなったもんだ。」


「最初はもっと小さな会場だったもんね。しかも、お客さん満席じゃなかったし。」

思い返せばキリがない。

それ程ここまで来るのは大変だった。

だが、それをみんなで乗り越えて来たのだ。


「それが、今じゃ私はセンターで姉グループの選抜。ピヨちゃんは卒業しちゃうし、時が経つのは早いよ。」

あの人が今何を考えているかちょっと分かる気がする。

やっとここに来て、居残り姉妹の絆がみえてきた。


「きっと泣いてまともに喋れないだろうから先に言っておくね…」

私は立ち上がりあの人の方を向く。


「なん年後になるかわからないけど、年末の紅白で会おう。私はバンドのメンバーとして。貴方は16区ナゴヤのエースとして。」

そう言って私は手を差し伸べる。


「私がアイドルやってる間に間に合わせてよね。」

あの人と笑いながら指切りをした。

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