卒業のあと 47
そんな中、私は事務所に呼ばれていた。
相変わらず綺麗な受付の女性に緊張しながら、社長室に入る。
「久しぶりだな。元気か?」
少し寝不足だったが、一気に眠気が飛ぶ。
「お久しぶりです先生。最近は忙しくさせていただいてます。」
社長室には私と鳩崎先生の2人だけ。
それから1時間半色々な話をした。
ある意味一番濃い時間だったかもしれない。
オーディションは大詰めを迎えている。
その事についても話した。
オーディションに携わって色々な才能に触れた。
みんな色々な夢を持っていてその夢を実現させる為にここにきている。
16区ナゴヤにとって必要なのはどんな子なのか。
珠紀と私を選考に参加させた意味がちょっとわかった気がした。
「2期生が決まったら、君にはその子達の前で話をして欲しい。話す内容はなんでもいい。」
鳩崎先生からの無茶振り。
相変わらず唐突だったが快く受ける事にした。
また、やる事が増えてしまった。
こうして、オーディションは最終選考を迎えた。
私と珠紀はグループの制服を着て審査スタッフの椅子に座っていた。
グループのメンバー代表としてついに公の姿で候補生と対面する。
ここまで来た候補生たちも流石にびっくりしていた。
しかも、最初からオーディションを見ていたことは誰も気づいていないようだ。
最終選考は歌唱審査とダンス審査の両方が行われる。
どちらも1週間前に課題曲を指定され、それを審査する。
みんなの注目はもちろんエントリーNO.6851の子。
どれくらい仕上げてくるか、そこに興味が向いていた。
ただ、さすがは最終選考に残った子達。
みんなそれなりにレベルが高い。
3次審査ではダンスがぎこちなかった子達も随分上達している。
このグループはダンスに力を入れている。
だからこそ、ダンスの適応力は結構大切だ。
苦手であっても、1週間以内には完璧に覚えきる努力する事の出来る子を見極めなくてはならない。
その習慣が身についているからこそ「居残り姉妹」なのかもしれない。
今思えば、オーディションの時から私とあの人は最後まで残って練習していた。
あの時から、3年が経ったんだなと少し感傷に浸るのだった。




