卒業のあと 46
オーディションの募集が始まってから4ヶ月が経っていた。
それと並行して私の卒業の日取りが発表される。
私のアイドルとしての最後の舞台はコンサート。
しかも、私の卒業コンサートと銘打って行われる事になった。
この様なセレモニーは16区ナゴヤとしては初めての事だ。
それに向け、ダンスの練習が始まる。
更に取材の数も増え、有名雑誌のグラビア写真もやらせてもらったりした。
そして、2期生の選考。
新たな才能を目の当たりにし、新しい刺激をもらいながら、やることが一気に増えながら、忙しい毎日を送っていた。
そして、居残り姉妹にも変化が起きていた。
ダブルセンターとして世間に知れたあの人は一気に忙しくなった。
その為、居残り練習もすれ違う様になってしまったのだ。
グループの仕事では会うし、いつも通り会話もする。
でも、どこかぎこちない。
お互いの間に溝が出来てしまった様だった。
誰もいないレッスン場で1人練習する私。
癖でペットボトルの水を2本買ってしまい、1本余っている。
まるで、パートナーを失ってしまったみたいだ。
鏡越しの私と同じで寂しく見えてしまう。
そんな中、私は23区トウキョウのライブにも参加した。
私達のグループは曲を2曲披露し、私個人としても、姉グループのユニット曲にも参加したりした。
そして、私達にとってもファンにとっても嬉しい事が起きた。
23区トウキョウの15枚目のシングル曲の選抜にて、珠紀とあの人が選ばれたのだ。
16区トウキョウとしては珠紀以来、2人目の快挙だった。
私が卒業するまであと2ヶ月。
あの人はどんどんアイドルとして先に進んで行く。
今まで選抜の後ろの方で目立たなかった存在が4ヶ月で国民的グループの選抜メンバーになった。
レッスン場でずっとその背中を見てきた私。
その背中が遠く感じる。
こうなる事を、あの人が日の目を浴びる事を望んでいた筈なのに。
そんな2人が溝を埋める時間もないくらい怒涛のスケジュールで時が進んで行く。




