あの子は透明少女 19
揺れている時間の長さからして電話で間違い無いだろう。
こんなタイミングだ。
緊急の連絡である事は間違いない。
パーカーを被った状態でスマホの画面を見る。
その眩しさに眩暈がしそうだ。
「どう?ピヨちゃん緊張してる?」
聞き馴染みのある少しだけ鼻の詰まった様な声。
「してる。真っ最中」
着信の相手が画面に表示された時点で分かってはいたが、声を聞くと誰なのかをしっかりと認識できる。
「パーカー頭から被って蹲ってるでしょ」
ご名答。
勘が鋭い所は相変わらずだ。
「よくわかったね。どこかから監視してる?」
意図せず冗談をいう。
さっきまで塞ぎ込んでたのが嘘みたいに。
「見てるよ。テレビの画面越しだけどね」
自然と笑い合う。
どちらが先にという訳でもなく、ほぼ同時に。
「踊る気らしいじゃない?亜佑美先生から聞いたけど」
場面展開。
学校の教室から、急に校長室に転換する。
「うん。そのつもり。だから、余計に緊張してる」
校長先生の前に立たされた私は姿勢を正す。
嘘をついても意味がない。
見栄を張っても見透かされる。
「仕切り直しだから。今、会場はフラット。むしろ、周りが興味を持ってくれる。ここまで言えば、分かるよね」
人としての厚みの違いを感じる。
これが、校長というイメージを私に与えたのだろう。
「あの時と一緒。ちゃんと分かってる」
私達はプロだ。
そこまで、言えば分かる。
「急にごめんね。前回も、珠紀に伝言を頼んだんだけど、伝えてくれてなかったから直接電話しちゃった」
また場面展開。
今度は学校近くのファミレス。
ドリンクバーで長い時間居座り過ぎて、周りに馴染んできたかの様なリラックス加減。
「流石珠紀。相変わらずだ」
また笑い合う。
周りの目を気にしながら控え目に。
「じゃ、またね」
「うん。また」
通話の落ちる音と共に暗闇に戻る。
自分で籠ったはずなのに、少し驚く。
殻をこじ開け、光に目を慣らす。
被っていたパーカーはそのまま袖を通した。
また、手鏡を確認しなくては。
間違いなく崩れているのだから。




