あの子は透明少女 18
15分の小休憩。
熱狂を風が冷ます。
日差しも雲に切り取られ暗くなる。
覚めていく。
ステージに掛かっていた蜃気楼も。
観客席の狂乱にも近い熱風も。
控え室にいる私。
15分の小休憩というのを聞かされた時は動揺したが、今は落ち着いている。
むしろ、このままの流れでステージに出なくてよかったとすら思っている。
先輩達はまだ動揺している様子。
固めていた気持ちにいきなりブレーキをかけられたのだ。
バランスを崩すのも仕方がない。
ここから気持ちを立て直すのは大変だ。
ましてや大舞台の経験がない先輩達。
緊張に拍車がかかっているかもしれない。
こういう時こそ、場数がモノを言う。
私がこうやって落ち着いていられるのは場数を踏んでいるから。
コンサートが時間通りに進む事の方が少ない。
いきなり歌の尺が変わったり、セットリストが前後することもある。
しかも、動揺している隙もないくらいに時間はギリギリ。
そんな事ばかりだった。
思い出を振り返っているが、動揺が少しで済んだのは本当の所、気持ちを作りきれずにいたから。
作ってないものは崩れようがない。
だから、むしろありがたいとすら思えているのである。
現実を見せつけられ、落ち込んでいた所を加奈子に助けられてなんとか気持ちを持ち上げた。
それでもフラットになっただけ。
ここから集中力を高めていく必要がある。
私はカバンからパーカーを取り出した。
いつもと同じグレーのジップパーカー。
控え室の冷房が強い時に体を冷やさないように用意していたのだ。
それを頭から被り視界を遮る。
ヘッドホンもして周りの音を遮断する。
周りの全てを遮り、自分だけの世界に入り込む。
その世界の中で自分と向き合う。
久しぶりにこのルーティンを人前でやった。
先輩達の前では遠慮して、個室トイレに篭っていたがそんなことも言っていられない。
15分という時間は長いものではないのだから。
しかし、自分の世界に入ろうとした瞬間、私のスマホが揺れた。




