あの子は透明少女 13
黙々と化粧をする市川双葉にみんなが気付いたのは、珠紀が彼女に話しかけに行ったから。
「あれ?双葉さんいつからここにいたんですか?」
珠紀はデビューした時から、23区トウキョウのシングルの選抜メンバー。
16区ナゴヤの中で唯一彼女に面識がある。
「さっき来たばかりだよ。テレビの収録があったから、ギリギリになっちゃった」
ライブがある日にも関わらず外仕事。
この頃から彼女は23区トウキョウの顔として忙しく働いていた。
「流石双葉さん!忙しいですね!」
珠紀は純粋だ。
この言葉にも嫌味はない。
2人が談笑する中、他のメンバー達はその光景を固唾を飲んで見守る。
化粧をする手はみんな止まっていた。
ライブのリハーサルで会う最初の先輩メンバー。
まさか、それがグループの絶対的エース。
緊張感が一層増していく。
ただでさえ居心地悪いメイクルームが、さらに居心地悪い。
そんなことよりも、この人に憧れてアイドルになったという子も居るほどなのに、全く誰の目にも止まらない。
その事に疑問を持つ。
比べる訳ではないが、珠紀は太陽の様な明るさを持ちグループ全体を光らせるオーラがある。
それは、どこにいても同じ。
誰もが納得する輝きを持っていた。
しばらくすると、スタイリストさんがやってきた。
ライブでも殆ど自分達でメイクをするのが大所帯グループの定めなのだが、流石はエース。
専属でヘアメイクを施されていく。
次第にアイドルになっていく市川双葉。
それと同時に輝きが増していく。
どんどんとアイドルに変わっていくのだ。
メイクが終わり、部屋を出る頃には誰もが振り向く程のオーラを纏っていた。
迎えた本番。
待機場でモニターを見ていた私は愕然とした。
アイドルというものをまざまざと見せられて。
歌い方、ダンス、ファンサービス。
全てにおいて格が違った。
私達がやっている事はお飯事に見えるくらいに。
アイドルになって満足していた自分がいたのだろう。
同じスタートラインに立てた気でいた自分が恥ずかしくなった。




