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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
あの子は透明少女
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あの子は透明少女 12

本番前のルーティンは意識しなくても身体が覚えている。

マヌカハニードリンクを飲み、目の前に手鏡を出す。

今回の衣装もボタンタイプ。

先に化粧をし終えても問題はない。


まるっきり一般人。

自分の顔を鏡で見た瞬間そう思った。


まだ、衣装に着替えてもいないし、化粧も薄い。

だが、それを差し引いても覇気がない。

今からお客さんの前に立とうとする人間のする表情ではないのだ。


本当にただの女子高生になったんだな。

心のどこかでまだ、自分は特別だと思い込んでいたのかもしれない。

アイドルを卒業した身でありながら。

アイドルという肩書きを捨てきれずに。


ちょっとフェスで本戦まで行けたが故に、自分の実力を過大に見積もっていた。

ベースすら意のままに操れずにいるにも関わらず。

今の私はこのフェスを見にきたギターケースを背負った女の子達となんら変わらない。


こんなことに今、気付かされるなんて。

落胆するでもなく、悲観するでもなく、私に湧いてきたのは懐かしさだった。


この気持ち初めてじゃない。

記憶の引き出しを一つづつ開けて行く。

懐かしさと言う手がかりだけで。


化粧をする手を止める。

そうだ。

化粧をしようとしている時だ。


“この人がセンター?”

記憶の中の私の心の声。

初めて市川双葉という人間に会った時の気持ち。


16区ナゴヤに加入してまもなくした頃、23区トウキョウのライブに参加することになった。

とはいえ、出番はあまりある訳でもなく、選抜メンバーとの絡みはほぼゼロ。

テレビで見ていたメンバーに会えるのではないかと期待していた私達は拍子抜けしていた。


そんな時だ。

メイクルームで化粧をする私達の前に突然現れたのは。


市川双葉。

23区トウキョウの不動のセンター。

だけど、テレビで見る姿とは違い、控えめで存在感が薄い。

メイクルームに入ってきた時、誰もその存在に興味を示さない程に。


隣に人の気配を感じたから私は気付けたが、他のメンバーは最初、自分達の化粧に夢中で全く気づいていなかったのだ。

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