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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
あの子は透明少女
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あの子は透明少女 11

見立てが甘かった。

そう言わざるを得ない。

ちゃんと実力のあるバンドはどんな時でもしっかりと観客を沸かせる事が出来る。

踏んできた場数が違うのだ。


私は肩を落とした。

希望的観測が崩れていく。

今の自分達との実力差を目の当たりにして。


憂鬱。

こんなに憂鬱なのは久しぶりだ。

全然心が踊らない。

このフェスが始まる前は凄く楽しみだったはずなのに。

始まってからも凄く高揚していたのに。


今日は心の疲労が激しい。

ただでさえ本番前で緊張して酷使しているのに、悩んで落胆して。

一応、アイドルをやってきた身だ。

割と心は鍛えられてきている。

壊れる事はないだろう。

けど、もうこれ以上は耐えられる気がしない。


「「fishing is good」さん待機場所にお願いします」

スタッフさんが呼びにくる。

インカムを手で押さえながら。


何も聞こえている訳ではないが、インカム越しに生放送独特の緊張感を感じる。

失敗しても編集できないというプレッシャー。

そして、時間の誓約。

タイムキープは絶対であり、ズレが出ると放送事故。

常に時間を意識して進行は進む。


「やっと出番か!待ちくたびれたぜ」

「fishing is good」のボーカルの人は背伸びをした後、メンバーの元へと戻る。

この人達はなんでそんなに落ち着いていられるのだろう。


「頑張れよ!お前ら!」

今岡先輩が立ち上がり叫んだ。

豊田先輩と話していた為、急に現れた今岡先輩に驚く。


慌ただしいスタッフに先導される、落ち着きを払った「fishing is good」の面々。

親指を立てて私達に合図し、控え室を出るのだった。


「キザ過ぎるだろ」

控え室にいる誰が言った。

確かにカッコつけ過ぎだと思う。

でも、この舞台で、このタイミングで、カッコつけられるのだ。

かっこいいではないか。


「さて、俺たちも準備しないとな」

豊田先輩に言われると、現実に戻ってくる感覚がした。

私達もステージに立つ。

気付いたら無意識にその現実から目を逸らしていた。


ふらつきながら今岡先輩達のいる場所まで戻る。

モニターから流れるインタビューの音に耳を防ぎたくなりながら。

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