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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
あの子は透明少女
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あの子は透明少女 10

次に出てきたはまたロックバンド。

東北予選1位通過のそのバンドは歌詞やメロディの完成度が高く、本戦が始まる前から話題には上がっていた。

3ピースながら音に厚みもあり、尚且つ若いからこそ出せる爽やかさもある。


特設サイトで公開されているの動画の再生回数も本戦出場バンドの中で3位。

優勝候補でもあるのだ。


比べるのもおこがましいが、方向性は私達に少し似ている。

だから演奏順が決まった時、注目すべきポイントだと考えていた。

このバンドの演奏次第で私達のステージでの振る舞い方が変わるからだ。


そもそもに、正統派の筆頭と言ってもいいこのバンドが観客から後押しされた時点で、同じ形で勝負しても勝ち目がない。

音選びや曲自体は負けていないと思う。

しかしその他、技術、実力、人気全てで劣っている現状。

さらに、ダンスパートがあるが故に凄く滑稽に見えてしまう。

真っ向勝負から逃げて飛び道具に頼ったと判断されてしまうから。


逆に、観客からの反応がイマイチなのであればまだ勝負は出来る。

その時は振り付けも少し派手にして目をひきやすくすればいい。

演奏も少し大きめのアクションをすれば、観客とのコミュニケーションをとりライブ感を出す事が出来る。


という様に作戦を立てていた。

しかし、演奏を聴いて愕然とした。

観客が歓声を上げているどころか、泣いている人までいるからだ。


関西地区代表のバンドがこの前に散々場を荒らしたとは思えないくらい落ち着いている。

派手ではないのに、演奏が観客の心を鷲掴みにしてして離さない。


この時、私は大きな勘違いに気づいた。

観客達はフェスを楽しむと同時に、好きなバンドを見にきたのだと。

ここに足を運んだ時点で聞きたいバンドは決まっているのだと。


はじめの方は本当に場が温まっていなかったのは間違いない。

だが、場が温まってしまったが故に思い想いにこのフェスを楽しむ方向にシフトしたのだ。


こうなると、私達は辛い。

人気のある「fishing is good」の後。

明らかに人気のない私達が観客に注目してもらうのはかなりの難易度と言えるだろう。

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