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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
あの子は透明少女
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あの子は透明少女 9

演奏が終わると厳しい表情のアルトビーツの2人が出てくる。

本来であれば和かにインタビューをする場面。

だけど、今誰も口を開けずにいた。


それもそのはずで、このバンドが今やった事をどう処理するのかというとても難しい局面。

観客もそこに焦点が集まっている。


どこに線を引くか。

肯定してしまえば観客もこの行動を一気に後押しする。

逆に否定をすれば、これからやるバンドは更に大人しく目立たない演奏になる可能性がある。

この判断でこのフェスの審査基準が一気に変わると言っても過言ではない。


カンペは出ない。

ディレクターさんはアルトビーツの2人の判断に任せる判断をした。

舞台の空気に敏感に反応できる芸人の能力に託したのだ。


「お前らやってくれたなー!!」

第一声は朝井さん。


「おいおいおい、お前ら!そこに一列に並べ!」

続いてスペーシー平尾さんが全員を並ばせる。


「審査員の皆さんに謝りなさい!」

そして、バンドメンバー全員を審査員席に向かせ、謝らせた。


「よし!これで皆さんこいつらを許してやってくれませんか?」

朝井さんが観客に呼びかける。

この一連の流れ。

言葉こそ強いものの、深刻な空気は一切流れていない。

真面目とコントの雰囲気のバランスを上手くとっていた。


その甲斐あってか、観客は大盛り上がり。

一瞬、重い空気になったのも相まってより盛り上がっていた。


これがお笑い芸人さんの場を回す力。

素直に尊敬する。


思えば、私が名古屋選考会でお客さんと喧嘩した時も最後は上手く締めてくれていた。

この後演奏するバンドが気まずくならいように。

元々ファンだったが、アルトビーツの2人の事をより好きになった。


降壇後、あのバンドはしっかりとスタッフさんやディレクターさんに怒られていた。

控え室の私達にも過剰過ぎるパフォーマンスはしない様にとの通達も行われた。


流石に凹んでいるかと思いきや、やり切った表情。

作為的だったのか、それとも思いつきなのか。

真相は分からないが、さっき自分で作った先入観のせいでどうしても悪く見えてしまっていた。


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