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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
あの子は透明少女
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あの子は透明少女 7

悩みの種は尽きない。

本戦が始まる前も始まっている今現在もこうやって悩んでいる。


一方、この人はどうだ。

ボーカルの人は出番を間近に控えても豊田先輩と明るく話している。

学校の休み時間に教室で話しているかの様に。


普段通りやればいいと言う言葉があるが、私はそんな事不可能だと思ってきた。

ここは教室ではないし、楽器屋「RACK」じゃない。

観客も沢山いる。

見える景色も肌で感じるものも違う。

そんな普段通りとはかけ離れた場所で普段通りなんて行える訳がない。


だけど、この人達を見れば納得だ。

普段通りという言葉を体現しているではないか。

こんなメンタルを持った人達の為にあると言っても過言ではない。


この様な人達が、私みたいな悩む人間に普段通りやればいいというのだろう。

だけどそんな事は根本から間違ったアドバイスだと思う。

そもそも、分かっていても出来ないから困っている訳で、悩む人間はどうすれば普段通りやれるのかを知りたいのだ。

まあ、前日の夜は緊張しない私も人の事は言えないけれど。


「どう思う?今の所の順位」

豊田先輩達の話題はこのフェスの暫定順位の話になる。


「正直な所、これだけジャンルが様々だと判断が難しい。ただ、会場も盛り上がってはいるけど爆発的な歓声はまだないから票も割れるだろうな」

私とほぼ同じ読み。

「fishing is good」のボーカルの人も気楽な雰囲気を出しているが、しっかりと観察している様だ。


「やっぱり盛り上げたもの勝ちか。確かに今の所、演奏自体はうまくてもみんな大人しいよな」

豊田先輩がそう言った瞬間、会場が大きな歓声に包まれる。

一斉にモニターを見ると、関西予選代表のバンドのボーカルの男子が拡声器を持ってステージを降りたのだ。


その男子は拡声器で歌いながら審査員のいるブースへと向かう。

そして、審査員の真ん前まで行くと叫ぶ。


「お前らの一番近い所でお前らに向けて俺は歌う!!」

再び大歓声が上がる。

審査員達もその大胆すぎるアピールに思わず笑いがおきていた。

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