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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
あの子は透明少女
401/417

あの子は透明少女 4

そこから、バンド、シンガーソングライター、ガールズバンドと続く。

ジャンルもオルタナティブ、ミクスチャー、パンクと様々。

フェスらしいラインナップだ。


こうなってくると審査をするかが難しくなってくる。

見ている側から見れば色々な音楽が聞けて楽しいのだが、ジャンルが違い過ぎて基準を決めにくい。

誰に投票するかは審査員や観客の好みになる訳だ。


いかに自分達の演奏を盛り上げ印象に残るか。

このフェスで結果を求めるのであればそれは必須になる。

ただ、そんな事を考えた上で見る他のグループの演奏は気が気じゃない。

私は控え室の隅でストレッチをしながら頭を巡らせる。


控え室は少しずつ騒がしくなっていく。

時間が経って緊張も解けてきたのだろう。

モニターを見て控え室の面々はそれぞれ違う表情を見せる。


純粋にこのフェスを楽しんでいる者や、ライバル達の演奏を真剣に聞く者、自分の世界に入り集中している者。

それぞれが無意識に意思表示を始めたのだ。


この大会に、いや、このステージに立つ理由は皆違う。

結果を残して羽ばたきたい者。

高校生活の思い出を作りたい者。

自分の生きた証を残そうとする者。

私達はどこに当てはまるだろうか。


メジャーデビューをしたい。

その目標は間違いなくある。

そのために、このフェスに挑んだはずだ。

ここに来るために様々な対策も積んできた。


なのにこの高揚感はなんだ。

体温が少しずつ上がっていく様な感覚。

この感覚はコンサートの前に似ている。

メンバーたちとこれから始まる非日常に胸を躍らせていたあの頃に。


同世代の音楽好き達がこんな大きなステージで自分達の作り上げた曲を披露する。

それは、今しかできない非日常だ。

その事が私の体温を嫌でも上げていく。

本当であればもっと冷静になって思考を巡らせ無くてはならないのに。


「なんかさ、ここにいるだけで楽しいよな」

豊田先輩が私の横に来てそう呟く。

私の心を察したのだろうか。

でも、本当に楽しそうな表情をしている姿を見る限り、ただの本心なのだろう。


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