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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
多分、アップビート
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多分、アップビート 26

「中学、高校と音楽科のある高校を勧められてました。音楽に集中出来る環境にいた方がいいだろうと。でも、普通科を選んだんです。勉強をしたいからと。部活にも入りませんでした。吹奏楽部はトランペットの練習時間が取れなくなるからとの事でした」

加奈子ちゃんと一緒にお弁当を食べている時に一度、普通科を選んだ理由を聞いた事がある。


"トランペットは先生が教えてくれますけど、勉強は独学では限界があるんです"

芸能科にいた私にもその事はなんとなく分かる。

分からない事を聞く事の出来る環境の大切さが。


「そんなあの子が唯一夢中になったのはアイドルでした。いつの間にか、テレビに釘付けでアイドルを観る様になって。グッズを買ったり、DVDを買ったりしました。握手会なんかにも行きたいっていい出したんです。今までトランペットの事にしか興味のなかったのに」

加奈子ちゃんのお母さんの声色が少し明るくなる。


「アイドルを好きになってから、あの子は少しずつ表情豊かになりました。アイドルの事を話している間は凄く楽しそうなんです。そのおかげでしょうか。コンクールでもそれまで以上の結果がでる様になって。明らかに音色がよくなったんです」


「そして、あなたに出会いました。その日からあの子は凄く楽しそうでした。学校や練習から帰ると、いつもあなたの話ばかりしていましたから」

そこまで話した所でまた私を真っ直ぐに見た。

流石、元アナウンサー。

話し方が上手い。

伝えようと言う意思が表情からもはっきりと伝わってくる。


「このコンクール、今日が今までの中で一番いい演奏でした。それはきっとあなたが見ていてくれたからだと思います。あなたがあの子の力になってくれたんです」

そこまで聞いた所で凄く目頭が熱くなる。

いや、少し前からもう熱かったかも知れない。


「だから感謝の言葉を言いたかったんです。加奈子を成長させてくれてありがとうございます」

私は唇を噛み、拳を握る。

涙を出さないように必死に堪えた。

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