表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
多分、アップビート
389/417

多分、アップビート 24

萌さんの前では虚勢を張ったが、審査の前は緊張して手が震えていたし、レッスンで先生に怒られ凹んだ事もある。

出てくる演奏者のレベルも高い。

やっぱりコンクールの期間は憂鬱だ。

いい事なんてあったもんじゃない。

ずっと自問自答している気になる。


それでもなんとか、最終選考まで来れた。

間違いなく萌さんに出会ったおかげだと思う。


今までずっと欠けている部分がある状態でコンクールに出て来た。

欠けた部分がある事を理解しながら。

最後のピースをずっと探して来たのだ。


そして、萌さんが感情をあわらにした姿を見て私は気づいた。

観客に暴言を言われ真っ向から対立した時。

一緒にご飯を食べている最中に悔しさから涙を流した時。


必要だったのは私自身の意思。

何のために、誰のために演奏をしたいかだったのだ。

自分の力を見せつけたいという人間では一生磨かれない魅力。


やっぱり柄本萌は私の憧れだ。

そんな人を一番近くで見ていられる。

誰よりも近くで。

だからこの最終審査、萌さんに聴かせる為に演奏しようと思った。

たとえ、座席に居なかったとしても。


だから、聴きに来てくれると言ってくれた時は本当に嬉しかった。

コンクールの重要性を少し忘れるくらいに。


ただ、自分の出番が来るまでは不安だった。

他の出場者の演奏を聴くとやっぱりレベルが高い。

待っている内に、積み上げた自信という砂の塔は脆くも崩れて風前の灯火。

機材のトラブルで延期にならないかとすら思った。



「以上で演奏は全て終了しました。これから、最終結果の集計をしますので出場者の方は一度控え室にお戻りください」

加奈子ちゃんの話を遮る様にアナウンスがかかる。

それとほぼ同時に観客席が明るくなった。


「萌さんすいません。一旦戻ります」

そういうと彼女は座席を立つ。

階段を登るたびに揺れるフード。

コンクール様に髪を巻いたであろう彼女は扉の先へと消えていく。


この心のざわつきはなんだろう。

いい所で話を遮られたせいだろうか。

それとも、別の理由か。

私は明るくなった天井を見上げ大きく息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ