表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
多分、アップビート
388/417

多分、アップビート 23

それは異様な光景だった。

こんなに存在感のある人が、当たり前の様に廊下を歩いていて、たくさんの生徒とすれ違っている。

それにも関わらず、誰も気にも留めない。

誰も振り返ったりしない。


正直、萌さんが誰にも気付かれない事にもどかしさを感じていた。

元アイドル、しかもオリコン1位も取った16区ナゴヤのフロントメンバーを務めた人なのに。

あんなに大きなステージで観客を魅了してきた人なのに。


それと同時に不安にもなった。

普通に登校し、授業を受け、帰宅していく。

一緒にお弁当を食べて、喫茶店に行って、買い物をして。

一緒にいる萌さんは私となんら変わらない普通の女子高生。

気付けば最初にあったはずの存在感も薄れている様な気がする。


もうすっかり一般人になってしまったのか。

私が尊敬したあの画面の中の人じゃなくなってしまったのか。

失望の感情も芽生えそうになっていた。


ただ、そんな私の愚かな感情はバンドに取り込む姿を見て消えて行った。

スタジオが空いていなくて練習できない日に言った不安という言葉。

真剣にステージできる服を選ぶ目。

大きい小さいに関係なく、しっかりと目標と向かい合っている。


そういう時の萌さんの顔は一流の顔。

コンクールで最優秀賞を取る人と同じ。

一切の妥協がない。


そして、ステージでベースを弾く萌さんを見て鳥肌が立った。

アイドル時代と変わらない、むしろ今の方が表現力が増している。

演奏はお世辞にも、上手とは言えないが伝えたい事はちゃんと伝わってくる。

この人はやっぱりステージに立つ人なのだと。

私が憧れた柄本萌は消えていなかった。


日常生活で自分の価値をひけらかしたりはしない。

自分の才能で虚勢を張る事もない。

ちゃんと輝くべき場所で輝く。

ステージに立てるという事の意味を分かってるから。


その姿を見てコンクールを戦い抜く決心がついた。

周りに流され一応エントリーするという後ろ向きな理由だったが、一緒に過ごしていく中で少しずつ変わった気がする。

萌さんでも悩むし、不安になるのだ。

だから私が憂鬱になるのは当たり前だと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ