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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
多分、アップビート
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多分、アップビート 16

二曲目が始まる。

さっきまで戦場を旗を持って突き進んでいた筈の彼女は一転して、月明かりに照らされた水面にいた。


ステージは太陽の光の様に明るいし、彼女は直立している。

にも関わらず、満天の夜空に青白い光。

しかも、湖畔の水の上滑るようにステップを踏む姿すら見えて来る。


「killing Time」

囁く様に声が聞こえて来る。

思わず見渡したがその声の主はもちろんいない。


再びステージに意識を戻す。

静寂。

ピアノの音も、トランペットの音もあるのに。

息継ぎのすら聞こえてくる様な静けさだ。


景色が記憶の引き出しを開けていく。

知っている。

いや、私はこの景色を誰よりも近くで見ていた。


偶然な訳がない。

彼女がこの出来事を知らないはずないのだから。


観客は魅了されていく。

ステージにいるのは、女子高生の小高加奈子ではない。

エメラルドグリーンのドレスを着た魔性の女性。

先程まで兵を力強く導いていたジャンヌダルクは、みるもの全てを惑わせる魔女になっていた。


こうなると三曲目。

私を含め観客も、何を演奏するか興味がある。

完全に魔女の魔力にやられてしまった。


二曲目の演奏が終わると皆が我に帰る。

ここはコンサートホールで、こんなに明るい会場だったのかと驚く。

魔法が解けたのだ。


ゆっくりと拍手の音が各所からなり始める。

曲間の拍手は短くが基本だが、あまりの出来事に会場にいた誰もがその事を忘れていたと思う。


三曲目。

大きく息を吐いた彼女。

その一挙手一投足がスローモーションに感じられる。

そして小高加奈子は少し微笑んで私を見た。


シガーの煙が会場に漂う。

木の温もりを感じる。

そして、人が沢山いる。

月は窓の外で寂ししく光を放つ。


この感じはもう間違いない。

「カクテルグラス」

魔女。

そして、ドロシー。

柄本萌と小山絵梨子。


彼女は再現しようとしている。

カクテルグラスのドロシーを。

この大舞台で。 


観客は戸惑っているだろう。

先程の心地いい静寂から一転。

静寂とはかけ離れた、場所に飛ばされたのだから。


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