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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 49

自分の部屋からリビングに移動した。

両親が撮り溜めしてくれていた私がパフォーマンスしている番組を見直す為に。

父も母も少し驚いた表情をしたが、何も言わずに私が映っている所を編集したDVDを渡してくれた。


また自分の部屋に戻りDVDを再生する。

卒業してから初めて自分のパフォーマンスを見直す。

何回も見直す機会はあったが、手を付けるのを躊躇っていた。


画面にはパフォーマンスする自分達。

アイドルだった頃はその姿を何度も見直していた。

それは、毎回ライブを行う度に反省点があって、足りない部分を探す作業。

踊っているのは自分だという認識だけがあって、ひたすらに動きを観察した。


アイドルを辞めた今、踊る姿ではなく感情の動きを確認している。

ファンではない人から心無い言葉を浴びせられても、空席が目立つライブ会場でも一心不乱にアイドルを全うする自分達の心の内を。


なぜ私は否定してしまったのだろうか。

蝉だって自分の存在をアピールしたくて必死に鳴いていたのに。

私だって同じだっだのに。


画面に映る自分はいつも必死だった。

思い出したくない事も沢山あったけど、それすら頭から置いていくくらいひたすらに。

誰からも愛されるアイドルになる為。


過去の自分を見て思った。

私はいつも負い目を感じているの。

過去の自分に。

昔の仲間たちに。


今の自分はあの頃の自分より劣っている。

何をやるにも昔の自分と比べてしまう。

その事を認めたくなくて予防線を貼り続けているのだ。

そうじゃないと言葉を使えば使うほど滑稽になっていく。


そりゃダンスも完成しないわけである。

逃げて誤魔化してばかりの思考で良いものが作れる訳がないのだから。


蝉は鳴く。

長い年月、土の中で過ごし、その努力と引き換えに僅かな時間で自分をアピールする為に。

自分はここにいると。

それをダサいと言って冷めたフリをする自分。

一番嫌いな人に私はなっている。


なんてプライドの高い女なのだろう。

私は自分を殴りたくなった。

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