夏蝉、鳴く 47
「これだけ曲あったら、曲同士が頭混乱しませんか?」
CDの束から気になったものを何枚か抜き出し中身を見ながら先輩に聞く。
「は?全部違う曲なんだから混ざるわけないだろ」
頭を上げ私を睨む。
さっきまで頭を抱えていたくせに私に怒るのは随分早い。
「なら、さっきから何で頭抱えてるんです?」
怒られた腹いせに意地悪な質問をする。
作業の邪魔になるだろうが、どうせ原稿は進んでいないのだ。
問題はないはずだ。
「納まりきらないんだよ。曲を紹介するには時間が短過ぎる」
ラジオは生放送は常に時間との戦いだ。
少しの時間のズレが放送事故に繋がる。
その為、尺に収まる様に短く簡潔に文を書かなくてはならない。
「それ、分かります!曲によっては切り取る所が違うだけで、全く違った印象になる事もありますもんね」
思い出せば、似た様な悩みを私も体験している。
新曲が出るたびに告知で色々な番組に出演させてもらった。
テレビもラジオも。
収録の打ち合わせで時間を教えてくださるパターンもあるし、生放送の流れでタイムキーパーさんが時間を提示してくださるパターンもある。
もちろんあらかじめ用意してもらったPR用の台本もあるのだが、時間に合わせその場で添削をしなくてはならない場面に遭遇した時、何を伝えるかで凄く迷う。
生放送の時は特に緊張する。
新曲をたくさんの人に知ってもらいたい。
その為に告知は凄く重要。
迷って無言になったらそれこそ台無しになってしまう。
グループに入りたての頃は上手くいかず、何度泣いた事だろう。
今思い出しても背筋が凍るし、恥ずかしくなる。
「曲を作った人が伝えたい事全部伝えたいんだよ。短い時間で!」
今岡先輩の気持ちを理解する。
DVDの特典映像になるくらい曲について語りたいし、なんなら歌詞に出てくる言葉のちょっとした小話もしたいくらいなのだろう。
立場や実績は全く違えど曲を作るもの同士。
先輩なりに思いがあるのだ。
そりゃ原稿が進まない訳である。




