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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 43

ただ、彼らの欠点は未だに解消されていない。

それが解消されない限り飛躍はない。

それが俺のスカウトとしての見解。

社長は彼らに何を見出しているのかは分からない。

ただ、今のままではスカウト会議で役員達が納得するほどの説得力ある言葉は出ないだろう。


部屋の中がいきなり暗くなる。

電気が消えた訳じゃない。

窓の外が暗くなったのだ。

何も景色を遮ることのないこの部屋は日の光だけじゃなく、雲の暗さまで入り込んでしまう。


突然の雨。

滝のような雨粒が窓に打ち付ける。

夕立だろうか。

すぐに止んでくれると嬉しいのだが。


東京は雨。

天気予報ではそんな予報ではなかったはずだ。

都内のビルの自分の仕事部屋で雨を睨む。


「鳩崎先生コーヒーをお持ちしました」

秘書の女性がコーヒーを運んでくる。

彼女は凄い。

俺がコーヒーを淹れてくれと頼まなくても、先読みして準備してくれるのだ。


雨が降ると低気圧のせいか身体が気怠くなってしまう。

すると、無性にコーヒーが飲みたくなるという俺の性質をよく分かってくれている。


「ありがとう」

彼女からコーヒーのカップを受け取る。

書類が山積みになっているこの机。

好きなデザイナーに設計してもらった世界で1台しかないもの。

ただ、書類が散漫しているせいで平社員の机と対等な価値に見えてしまう。


そんな散らかった机の上の僅かなスペースに置いた。

こう見えても全ての配置は決まっており、コーヒーを置くスペースもちゃんと決まっているのだ。


「失礼します」

秘書が部屋を出たのを確認すると、俺はコーヒーを啜る。

雨の音はバックミュージックに聞こえる位、大きい。

かなり激しく降っている。

この後、舞台を観に行くはずだったのに気分が下がっていく。


とりあえず、舞台を観に行くまでの時間で書類の山を少しでも減らさなくてはならない。

ペーパーレス、なんでもデジタルで処理出来る時代に何故こんなにも紙の束があるのか不思議だ。

そんな愚痴を言っても仕事が終わる訳ではない。

とにかく目の前の仕事をやっていくしか方法がないのだから。

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