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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 42

「不思議だよね。普通に考えたら実力のないバンドが本戦行くなんてある訳ないのに」

社長は俺がどれだけ説得しても、まだ「vacant land」にこだわっている。


正直何を考えているのか分からない。

ただ、社長の勘でスカウトした無名の歌手がブレイクする事がよくある。

カリスマ性とでもいうのだろうか。

伊達にこの会社のトップに立っている訳ではない。


もちろん外れる事もある為、あまり信用は出来ないのだが。

俺には分からない何かを社長は彼らから感じ取っているのかも知れない。


彼らが他のバンドと明らかに違う所といえば、やはり柄本萌と言う存在だろう。

元16区ナゴヤの選抜メンバー。

それだけで、話題性はある。


実際3次選考会でもかなり目立っていた。

ステージでの立ち振る舞いはやはり堂々たるもの。

おまけに観客に啖呵を切っる度胸。

それがSNSでも話題に上がり、予選会終了後から急激に再生回数が伸びていた。


なんと言っても、現地スタッフ達からの評価の高さ。

2次選考会の時と同様に3次選考会でも、会場にいた様々な役割のスタッフ達の誰もが話題に上がっていたらしい。

すれ違うスタッフ達全員の目を見て挨拶するその姿勢。

元アイドルだからと言うより、彼女の人間性がそうさせているのかも知れない。


思えば、彼らは最初から話題事欠かない存在だ。

1次選考のデモテープ審査の時も、突然鳩崎先生からの手紙と共にやってきた。

もちろん驚いたし、1次選考の締め切りが終わった後にやってきたという間の悪さに不安が過ぎる。

手紙には彼らも選考に参加させて欲しいと書かれており、審査したスタッフ一同は鳩崎先生からの推薦状として特別に選考に参加させることになったのだ。


そんな特例ではあったものの、審査に関しては公平に行った。

審査する中で、聴いていて心が懐かしくなる音楽を奏でる彼らは他のバンドとは確かに違うモノを作っていると感じたのは確かだ。

だからこそ、2次、3次選考まで彼らは進めたのだと言える。

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