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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 41

社長は今日機嫌がいいものだと読んでいた。

「vacant land」の話を俺にしていた時は、興味を示していたから。

だが、蓋を開ければ惨敗の様相。

俺がプレゼンするバンドに尽く興味を示さない。

俺の読み違いだろうか。

だとしたら、プレゼンの前提から間違っていた事になる。


プレゼンしたのは全国を回って彼らを見てきた自分が目を引いたバンドばかり。

実力のあるバンドを選んだはずだ。

いつもの感覚なら何組かは反応がある。

そう考えると社長の頭の中は今、他の情報を受け入れない状態なのではないか。


「気になりますか?vacant landの事」

俺は一か八か聞いてみる事にした。


「そうね。まだまだ青臭いけど、なんか好きな感じなんだよな」

やはり間違いない。

社長の頭の中は「vacant land」の事で一杯の様だ。


正直自分自身も3次選考でステージに立つ彼らを観て本戦に上がってくるかも知れないという予感はしていた。

ただ、本戦を戦うにはまだ実力的に心細い。

彼らより演奏も上手くて完成されたバンドは沢山いる。


「いくら社長が気になっていらっしゃっても、今のままじゃダメなのも事実です。足りないものが多過ぎます」

俺は意を決して社長に意見を言う。

レコード会社にとってバンドは商品であり看板。

未熟なバンドでは会社の利益を損なうどころか、泥を塗りかねない。


「それはわかってる。でも、気になるの。鳩崎くんの目にも留まったわけだし、彼らが本戦どう戦うかとかね」

鳩崎先生が推薦してきたのは事実であるため、反論がし辛い。

会社員という立場しか持ち合わせていない俺が、音楽業界を牽引する人物に勝てるわけがないからだ。

説得力がまるで違う。


「vacant land」

観客の得票数は3位ギリギリ。

特設サイトで配信されている曲の再生された回数は全予選会の中で13位。

予選会で落ちたバンドよりも、再生回数が下回ると言う結果だった。

良くも悪くも、予選会場の場所で出場権を得たのだ。


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