夏蝉、鳴く 37
いつになくやる気を見せる豊田先輩。
自作のパワーポイントを用意しているという気合いの入れ様。
その手際の良さに私達は圧倒されていた。
さらに驚かされたのは先輩のパワーポイントがとても手が込んでいるという事だ。
まず、これまで選考を振り返り問題点や他のバンドの特徴を説明。
表やグラフを使い、わかりやすく解説してくれている。
それどころか、動画を随所に挟み補足までしてくれる。
とても素人とは思えない出来栄えとなっていた。
豊田先輩が何故編集技術に長けているのかは分からない。
だが、おかげでこれから挑むものがどんなものなのか。
そして、なにがやらなくてはならない事なのかが明確になっていく。
まず、今回の本戦会場は東京にある野外ステージ。
数多くの有名アーティスト達が今もライブを行う場所。
私もアイドルだった頃、ここでライブをした事がある為よく知っている。
5000人を収容できる会場だ。
しかも、今回は従来のテレビ放映に加え、ネットでのライブ配信も決定している。
前回の会場と同じ場所。
審査の方法も同じで、審査員、観客の得票数で優勝者が決まる。
次に本戦のルール。
ステージで演奏できる時間は1組20分。
準備やMCも時間の中に含める為、大体3曲が限度だと考えられる。
曲やパフォーマンスは何をやっても自由。
しかし、ステージから離れる事は禁止されている。
他にもテレビでの生放送のモラルに反する事は禁止となっている。
過去の大会の優勝バンドの演奏も見た。
どのバンド達も変に目立つことをしない。
実力で周りを盛り上げて優勝していた。
ステージで披露する3曲は何を演奏するべきか。
1曲は予選から私達がずっと歌ってきた「あきっぽい彼女」というのは決まっている。
残りあと2曲なのだが、披露できる曲が思い浮かばない。
何点か候補は出してみたが、広い野外ステージでは映えないであろう事が容易に想像できてしまったからだ。
新曲が最低でも1曲は必要。
その答えに行き着くまで時間は掛からなかった。




